バジョット(読み)ばじょっと(その他表記)Walter Bagehot

デジタル大辞泉 「バジョット」の意味・読み・例文・類語

バジョット(Walter Bagehot)

[1826~1877]英国の経済学者・ジャーナリスト雑誌エコノミスト」の主筆として活躍著作ロンバード街」では、イングランド銀行最後の貸し手としての役割を論じた。他の著作に、政治学古典的名著とされる「イギリス憲政論」や、文芸評論チャールズディケンズ」などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バジョット」の意味・わかりやすい解説

バジョット
ばじょっと
Walter Bagehot
(1826―1877)

イギリスの経済学者、政治学者、ジャーナリスト。サマーセットのラングポートに銀行家の息子として生まれる。ロンドン大学のユニバーシティ・カレッジを卒業後、家業の銀行業に従事するかたわら、評論活動を行った。1855年『ナショナル・レビュー』を創刊、おもに文芸批評に携わったが、1858年『エコノミスト』の創設者であったジェームズ・ウィルソンの長女と結婚、2年後岳父の急死によって『エコノミスト』の経営者、続いて編集者となり、政治、経済、文化、歴史、人物評の幅広い分野にわたる、生き生きとした描写からなる評論活動を行った。イギリスの議会政治を克明に描いた『イギリスの国家構造』(1867)、政治心理学の草分けとされる『自然科学と政治学』(1872)は、政治思想史上の古典の地位を占め、またイングランド銀行の役割を論じた『ロンバード街』(1873)は、19世紀の金融史を論じるうえで不可欠の著作となっている。

[千賀重義]

『深瀬基寛訳『英国の国家構造』(1947・弘文堂/1967・清水弘文堂書房)』『大道安次郎訳『自然科学と政治学』(1948・岩崎書店)』『久保恵美子訳『ロンバード街』(2011・日経BP社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「バジョット」の意味・わかりやすい解説

バジョット
Walter Bagehot
生没年:1826-77

イギリスの銀行家,文芸評論家,ジャーナリストで,さらに政治・経済学者。大学卒業後フランスに渡り,ルイ・ナポレオンのクーデタの評論で注目され,帰国後,家業の銀行業をつぐほか文芸評論誌の創刊に加わった。《エコノミスト》誌の創始者ウィルソンの娘と結婚した縁で,のちに同誌の経営・編集上の責任者となった。多数の評論を残したが,その主著《イギリス憲政論》(1867)は第1次選挙法改正後の憲政のリアルな描写で有名であり,《自然科学と政治学》(1872)によって政治心理学の草分け的存在ともされる。《ロンバード街Lombard Street》(1873)は,イギリスの金融構造と中央銀行の責任について古典的説明を行っている。全集10巻(1915)がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バジョット」の意味・わかりやすい解説

バジョット
Bagehot, Walter

[生]1826.2.23. ラングポート
[没]1877.3.24. ラングポート
イギリスの政治学者,経済学者,社会評論家。ロンドンのユニバーシティ・カレッジに学ぶ。卒業後文芸批評のかたわら,1852年から家の銀行業にたずさわった。 60年『エコノミスト』の主筆として経済,社会,政治,法律,文学から,生物学にいたるまで広範な執筆を行なった。イギリス政治制度を実態と政治文化の角度から考察した『イギリス憲政論』 (1867) は政治学の古典として有名,また『ロンバード街』 (73) は銀行家としての経験に基づいて銀行の役割を実証的に解明したものである。ほかに『自然科学と政治学』 (72) などがある。

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世界大百科事典(旧版)内のバジョットの言及

【エコノミスト】より

…発刊当時は,実際上の主目標は穀物法の撤廃に置かれ,R.コブデン,J.ブライト,J.S.ミル,T.ホジスキンらの多くの論客が寄稿し,反政府的色彩が強かった。60年以降,女婿のW.バジョットが主筆となり,終生(‐1877)健筆をふるい,名編集者としてますます同誌の名声を高めた(当時の発行部数約3000部)。1943年9月(当時は約1万部),創刊100年を記念して経済問題だけでなく,広く社会諸事象をも取り扱うことにするとともに,単に寄稿家の意見を掲載するだけでなく,同誌独自の意見をもつために,Economist Intelligence Unitを創立し,今日,ロンドンだけでも1000余人,日本を含む世界の大多数の国の現地支所を合わせると優に1万を超す職員を擁している。…

【演技】より

…政治家が舞台の上の役者にたとえられるゆえんである。 W.バジョットはかつて,イギリス憲法は演劇的部分と機能する部分とから成ると表現した。君主を中心に据え,非常に古く,伝統的要素に包まれ,壮麗さを帯びて威厳をもった前者が,民衆の心をとらえ,動かす。…

【権力分立】より

…その後,近代憲法が確立していく過程では,多かれ少なかれ議会の優位が貫かれるようになると,そのような制度を説明する用語として権力分立という言葉が積極的に使われることはむしろ少なくなる。たとえば,19世紀イギリスで確立した,議会優位型の議院内閣制についてW.バジョットは,《イギリスの国家構造》(1867)のなかで,立法権と行政権の〈融合〉を論じ,〈内閣は下院の一委員会,ただしみずからを任命した議会を解散できる委員会〉と表現した。他方,19世紀後半から20世紀にかけてのドイツで,内閣の対議会責任制度すなわち議院内閣制の導入を唱えるParlamentarisierung(議会制度化)の要求が出されるようになったとき,そのような進展をおしとどめようとする側がGewaltenteilung(三権分立)のシンボルを援用したのであった。…

※「バジョット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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