カルバンの主著。宗教改革の神学を代表する体系的書物。〈綱要〉と訳されるラテン語institutioは〈教育〉〈教程〉を意味する。初版が1536年にバーゼルで出版されたとき,人文主義者としての交際があったフランス王フランソア1世に献呈され,弁証の書として読まれることをはかったが,執筆の動機は信仰者に筋道立った教理教育の必要を痛感したところにある。59年に出た第5版が決定版である。いずれの版もラテン語で書かれたが,第2版以後著者自身の手でフランス語に訳され,また早い時期に英語,オランダ語,ドイツ語に訳されたため,ラテン語を読むことができない階層の人たちの中にも多くの支持者を得た。構成は初期と後期の版で異なっており,分量も第5版は初版の約3倍である。決定版についていえば,全4部から成る。(1)創造主たる神。創造と摂理を説くが,はじめの部分で聖書によらなければ神を知りえないと論じる。(2)贖主(あがないぬし)たる神。キリストとその業績を述べる。旧・新約の関連を救済史の観点から論じる。(3)キリストとその祝福にいかにしてあずかるか,これはもっとも特色ある部分をなす。(4)キリストとの内的な交わりがいかにして外的に維持されるか,すなわち教会論で,最後の章は国家論にあてられる。現代でも多くの国で読まれ,アジアでは日本語訳がもっとも古く,中国語,朝鮮語,インドネシア語訳も出版されている。
執筆者:渡辺 信夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ジュネーブの宗教改革者ジャン・カルバンの著作。ラテン語とフランス語で書かれている。初版は1536年バーゼルで出版された6章の著作からなり、宗教改革の立場からキリスト教信仰を明確にしたものであった。その後、版を改めるたびにカルバンはこれを書き改め、最終版(1559)は4篇(へん)80章からなる大冊となった。聖書に基づきキリスト教信仰を体系的に記述し、プロテスタント教会の教義学の基本の一つとなった。なお、カール・バルト『教会教義学』(全14冊)はこれに倣い、かつ匹敵する現代の大著である。
[徳善義和]
『渡辺信夫訳『キリスト教綱要』全7巻(1962~65・新教出版社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
1536年,カルヴァンがバーゼルで公刊したプロテスタントのための護教論。フランソワ1世に捧げられたが,著者の宗教改革的実践の過程で逐次増補改訂され,福音主義信仰の規範を示す神学書となる。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…ルターの書物から感化を受けたが,宗教改革への決断は久しくためらっていた。回心を経験して福音主義者のうちに身を投じ,古典学者としての道を捨て,フランス宗教改革の地下活動に服務しながら,主著《キリスト教綱要》を書く。学者で宗教改革の実践に走るのは,フランスでほとんど前例を見ない挙であった。…
※「キリスト教綱要」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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