翻訳|kilt
スコットランド北部のハイランド地方で用いられてきたケルト族男性の腰衣(ようい)。語源はオランダ語のkilte(装う,巻きこむ)。現代でも日常に,あるいは正装として着用され,スコットランドの軍服や警察官の制服としても知られる。膝の出る短い巻きスカート形式で,後ろに22本前後の深いひだがたたまれ,前はひだなしでエプロン部分と呼ばれ,右前に合わせて着用する。羊毛を材料とし,ケルト族の氏族制を象徴するタータンを必ず使用する。ハイランドでは近世まで幅約1.3m,長さ5~6mの布を全身に巻きつけ,ウエストをベルトで締めたタータン・ベルテッド・プラドtartan belted plaidか,下半身はトルーズtrewsというズボンをはき,上半身にこの布を掛けたバンドリー・ファッションbandolie fashionであった。この布は夜間には寝具としても使われた。靴下をはき現代のキルト姿が現れるのは17世紀に入ってからである。1746年のジャコバイトの反乱に荷担して敗れたハイランド人のキルト着用が,バッグパイプとともに禁止されたが,軍服としては残り,1783年以降ふたたび一般の服装となった。第1次大戦ころまでは女性のキルト着用は許されず,身に着けた者は侮蔑と非難の対象となった。
執筆者:松本 敏子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
男子用膝丈(ひざたけ)の巻きスカート。イギリス、スコットランド北部のハイランド地方の民族衣装。それぞれの氏族(クランclan)を表すタータンtartan(多色格子縞(じま)のウール地)でつくられ、氏族の男子や軍人が着用する。元来は1枚の布を体に巻き、ベルトでウエストに固定し、膝丈のスカート部と背を覆う上衣部分として着装し(ブリーカン・フェイルbreacan-feile)、ハイソックス、スポランsporran(下げ革袋)などを組み合わせた。現代のキルトはスカート部だけとなり、腰骨のあたりでバックルで締める。今日では、スコットランドの男子、軍楽隊の服装として知られているほか、婦人、子供服の基本的なスカートとして広く着用されている。キルトは元来、スコットランドあるいはサクソン語で「短くする」「体に縛り付ける」の意。
[深井晃子]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…2枚の布の間に綿か芯をはさみ,布全体にステッチしたのをイングリッシュ・キルティングといい,図柄の輪郭を2本のステッチで縫い,裏から毛糸などを詰めるのがイタリアン・キルティング。表布にアップリケまたはパッチワークをし,綿か芯をはさみ裏布と3枚重ね,表の図柄にステッチしたのがアメリカン・キルティングまたはパッチワーク・キルトともいう。〈キルト〉という言葉は,14世紀ころにラテン語から出て,マットやクッションなどの詰め袋を意味した。…
※「キルト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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