日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリープ試験」の意味・わかりやすい解説
クリープ試験
くりーぷしけん
creep test
材料試験の一種。一定温度、一定応力のもとで時間の経過とともに材料の変形が進行する現象をクリープcreep(這(は)う、のろのろと動く、の意)といい、この性質を調べるための試験をクリープ試験という。
一般の金属材料では、高温・高応力のもとでクリープ変形が問題となるが、スズ、鉛のように融点の低い金属では室温でもクリープ変形が生ずる。プラスチックスもクリープ変形の生じやすい材料である。
工業の進歩につれて、材料が高温・高応力のもとで使用されることが多くなった。たとえば、化学プラントや原子炉の設計においては、使用中のクリープ変形が運転に支障をもたらさないように、ある限度以下の応力で材料を用いなければならない。このように、材料はある温度や雰囲気のもとで、時間に依存した力学的挙動を示すが、所定の応力を与えて時間の経過とともに進行するクリープひずみを測定し、長時間の使用に耐える設計上の限度を求めるためにクリープ試験が行われる。また、クリープ変形が進行し、材料が破断するまでの全過程を観察し、破断強さ、破断伸び、破断寿命などを求める試験をクリープ破断試験という。金属材料に対して一般に行われるのは、大気中での引張りクリープ試験および引張りクリープ破断試験であり、JIS(ジス)(日本産業規格)にその試験方法が規定されている。一定温度のもとで、一様断面の引張り試験片に一定荷重を加えると、負荷と同時に瞬間的にわずかに伸びたのち、時間の経過とともに伸び変形が増加する。この伸びをもとの長さに対する比率すなわちクリープひずみとし、時間に対して描いた曲線をクリープ曲線という。同一材料でも、温度や応力の大きさによりクリープ曲線は変化する。
クリープ強度を表す代表的な量としては、一定温度のもとで、ある長時間後にクリープひずみがそれ以上進行しなくなる応力のうちで最大のものと定義されるクリープ限度がある。
材料のクリープ特性は、室温における機械的性質に比べて組織敏感性が強く、試験条件のわずかな変動によって試験結果は大きく影響を受ける。したがって、クリープ試験機は、長時間にわたって規定の試験条件を十分満足するようにくふうされ、同一条件で多くの試料について試験して、初めて信頼できるデータを得ることができる。
[林 邦夫・中條祐一]