クルマバソウ(読み)くるまばそう

改訂新版 世界大百科事典 「クルマバソウ」の意味・わかりやすい解説

クルマバソウ (車葉草)
sweet woodruff
Asperula odorata L.

6~8枚の葉が輪生するアカネ科の多年草。乾燥すると芳香を発する。高さ10~35cmほどで全体無毛。葉は倒披針形から狭長楕円形。晩春に,茎頂および葉腋(ようえき)に集散状の花序を出し,小さな白色の花をつける。花冠は漏斗形で4裂する。園芸的には樹陰地の下草に植え込まれるが,乾燥品はクマリンを含有し,香りがよいので保管中の衣類の間に入れたり,ビールやワインに入れて芳香をつけるのに用いられる。とくにドイツではこの草で調味した酒はマイワインMai-Weinと呼ばれている。ヨーロッパや北アフリカとサハリンから本州中部以北に分布している。

 クルマバソウ属Asperulaはヤエムグラ属に近縁で,ユーラシア大陸の温帯域を中心に200種ほどが分布している。A.tinctoria L.(英名dyer's woodruff)は中部ヨーロッパからソ連にかけて分布し,ときには花壇にも栽植され,根から染料を採取した。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クルマバソウ」の意味・わかりやすい解説

クルマバソウ
くるまばそう / 車葉草
[学] Galium odoratum (L.) Scop.
Asperula odorata L.

アカネ科(APG分類:アカネ科)の多年草。葉が馬車の輻(や)(車輪の中心部から放射状に出ている細長い棒)のように並んでいるため、この名がある。地上茎は直立し、高さ15~35センチメートル。葉は6~10枚が輪生するが、真の葉は2枚で、他は托葉(たくよう)である。花は白色、小さく、枝の先に多数つき、5~7月に開く。果実は鉤(かぎ)状の柔らかい毛が密に生える。北海道から本州の山地の林内に生え、朝鮮半島、シベリアからヨーロッパ、北アフリカに広く分布する。乾くとクマリンの芳香があり、ヨーロッパでは、保存したリンネル類に香りをつけたり、ぶどう酒、リキュール、嗅(か)ぎたばこなどの香料とする。また鎮静剤など薬用としても用いる。クルマバソウ属はヨーロッパ、アジア、オーストラリアから約200種が知られ、地中海地方に多い。ヤエムグラ属に統合する意見もある。

[福岡誠行 2021年5月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android