改訂新版 世界大百科事典 「クレプスコラーリ」の意味・わかりやすい解説
クレプスコラーリ
Crepuscolari
20世紀初頭のイタリアに登場した一群の詩人たちを指す。黄昏(たそがれ)派ともいう。1910年,批評家のG.A.ボルジェーゼが発表した短文のなかで,カルロ・キアーベス,ファウスト・マリア・マルティーニ,マリーノ・モレッティの登場によって,従来のイタリア詩が終焉に向かいつつある状況を〈黄昏〉と評したのが呼称の由来。ほかに代表的詩人として,S.コラッツィーニ,G.ゴッツァーノ,コラード・ゴボーニらがいるが,彼らがみずから詩派を結成したり運動を展開したわけではない。この詩人たちに共通する特徴は,前代の詩人パスコリや,とくに,きらびやかな言葉を駆使したダンヌンツィオに対するあからさまな反発を表明する一方で,不在感,孤独,むなしい愛,不信,あるいはいっさいの思想への反感,現実や歴史の風刺などを主題にした詩を,飾りけのない平明な言葉でつづったところにある。彼らの提出した問題は,存在の不快感を表現する20世紀の詩全般に共通するところがある。彼らはジャム,メーテルリンク,ラフォルグ,ロダンバックの影響を受けるとともに,詩から韻律を排除した自由詩を試み,その試みはマリネッティやウンガレッティによって徹底的に推し進められた。この点でも彼らの詩,とくにゴッツァーノとコラッツィーニの詩は現代イタリア詩の出発点として近年注目されるようになった。
執筆者:川名 公平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報