クワエダシャク(読み)くわえだしゃく

改訂新版 世界大百科事典 「クワエダシャク」の意味・わかりやすい解説

クワエダシャク (桑枝尺)
Menophra atrilineata

鱗翅目シャクガ科の昆虫幼虫クワ害虫としてよく知られている。十分成長した幼虫は7cmくらいに達し,これがクワの幹や枝に腹脚でつかまり,一直線の姿勢で静止していると,クワの枯枝にそっくり似ている。昔,クワ畑で手入作業や葉の収穫をするとき,土瓶に入れたお茶を持ち込み,枝とまちがえて土瓶のつるを掛けると,土瓶が落ちてしまうところから,このシャクトリムシドビンワリと呼んでいた。年2回の発生で,落葉や木の隙間で幼虫の状態で越冬する。春にクワの芽が出始めると,幼虫がこの中に頭を突っ込んで食べるので被害が大きい。5月ころに老熟し蛹化(ようか)する。第1回目の成虫は6月ころに羽化し,この子孫の幼虫は8月ころに現れ,第2回目の成虫は秋に羽化する。成虫は開帳4~6cmの茶褐色のガで,昼間翅を広げて静止していると,樹皮によく似ていて発見しにくい。夜行性で,よく灯火に飛来する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クワエダシャク」の意味・わかりやすい解説

クワエダシャク
くわえだしゃく / 桑枝尺蛾
[学] Menophra atrilineata

昆虫綱鱗翅(りんし)目シャクガ科に属するガ。はねの開張40~60ミリメートル。はねは茶褐色、前翅には2本、後翅には1本の黒線があり、前翅では強く折れ曲がる。北海道から奄美(あまみ)大島まで全国的にごく普通にみられ、よく灯火に飛来する。外国では朝鮮半島、台湾、中国大陸などに分布する。幼虫はクワの害虫としてよく知られ、年2回の発生で幼虫態で落葉の中などで越冬する。早春からクワの幼芽の中に頭を突っ込んで内部を食害する。大きくなると体長70ミリメートルぐらいになり、枯れ枝とそっくりの姿で、昼間はクワの枝に一直線になって静止している。昔、クワ畑に作業に出た農民が枝と見誤って土瓶を吊(つ)るし、落として割ったという俗説から、ドビンワリ(土瓶割)という名も使われた。

[井上 寛]


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百科事典マイペディア 「クワエダシャク」の意味・わかりやすい解説

クワエダシャク

鱗翅(りんし)目シャクガ科の1種。開張45mm内外,褐色地に暗褐色細線がある。日本全土,朝鮮,中国,台湾,インドに分布。幼虫はクワの葉を食べる害虫,シャクトリムシの1種で,体を伸ばして静止すると小枝そっくりになる。農夫がこれに誤って土瓶(どびん)を掛けて割るというのでドビンワリの俗称がある。成虫は夏に現れる。

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