日本大百科全書(ニッポニカ) 「グッドリッチ」の意味・わかりやすい解説
グッドリッチ
ぐっどりっち
Goodrich Corp.
アメリカの大手航空宇宙機器、工業技術製品メーカー。1912年BFグッドリッチThe B. F. Goodrich Co.の名称で設立。創立以来、ゴムタイヤ製造の大手企業として発展してきたが、1980年代の再編以降、航空宇宙・工業製品メーカーへの業態転換を進め、2001年現社名に改称した。
[田口定雄]
タイヤ・メーカーとしての歴史
同社の起源は1870年に化学博士のグッドリッチBenjamin Franklin Goodrich(1841―1888)が、のちのゴム工業の中心地オハイオ州アクロンに、ホースの生産を目的として最初のゴム製造会社を共同出資でおこしたのに始まる。1880年に改組、1882年ベルト生産、1896年に自動車タイヤ生産に進出した。1906年ゴムの加硫促進剤の開発、1910年自動車用コードタイヤの開発など先駆的役割を果たし、原材料の化学分野や各種ゴム製品の垂直統合(部品調達や業務連携を企業内で行うこと)に注力した。1926年ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を開発、翌1927年ビニル・プラスチック製造会社ゼオンThe Geon Co.を設立した。1937年合成ゴム生産を開始。1945年には化学事業を合併して、BFグッドリッチ・ケミカルB. F. Goodrich Chemical Co.を発足。1946年チューブレスタイヤを開発。以後、1960年代から1970年代にかけて、化学・ゴム製品企業の小規模買収やプラント建設を通じて拡大し、海外進出も強めた。
[田口定雄]
タイヤ事業からの撤退
1980年代以降、ゴムタイヤ、化学事業などの低迷から、1985年に大規模な事業再編計画に着手、航空宇宙関連などの買収を重ねる一方、ほかの主力事業を売却して財務強化を図った。1986年、子会社のコンチネンタル・コンベア・アンド・イクイップメントのほか、ホース事業、ベルト事業を売却。1986年、タイヤ事業部門をユニロイヤルとの合弁企業ユニロイヤル・グッドリッチ・タイヤ(UGTC)に統合して分離(1990年以降は仏ミシュランの傘下)。さらに1988年UGTC株式の50%持ち分をも売却、航空機用タイヤ部門もミシュランに売却してタイヤ市場から完全撤退した。1993年、PVC事業部門をゼオン・ビニル(現社名ポリワンPolyOne Corp.)として株式公開により分離し、ビニル製造事業から撤退した。1997年にはジェット機エンジン部品、統合航空システムのロールRohr、1999年航空機部品のコルテック・インダストリーズColtec Industriesを買収して航空宇宙分野を強化した。一方、2001年に特殊化学事業を投資家に売却、航空宇宙・工業製品メーカーへの転換を果たした。
[田口定雄]
その後の動き
2002年にエアロノーティカル・システムズ社Aeronautical Systems Inc.、2005年にセンサーズ・アンリミテッド社Sensors Unlimited Inc.などを買収した。エアバス社、ボーイング社などへの部品供給で世界的に有力な企業となっている。2008年の売上高は70億6200万ドル、純利益6億8100万ドル。
[編集部]