コガシラアブ(英語表記)spider fly
bladder fly

改訂新版 世界大百科事典 「コガシラアブ」の意味・わかりやすい解説

コガシラアブ
spider fly
bladder fly

双翅目直縫群コガシラアブ科Acroceridaeに属する昆虫総称。世界で450種が知られている。日本では,セダカコガシラアブ,シバカワコガシラアブ,キイロコガシラアブなど10種以上が知られる。典型的なコガシラアブは,大部分複眼からなる小さな頭部,風船様の膨らんだ腹部をもつ。セダカコガシラアブでは,胸部は背面に向かって膨らみ,頭部はその下に隠れる。成虫山地で花上に見いだされる。生態はあまりよくわかっていないが,これまでに知られているほとんどの種は,クモに内部寄生する。卵は,植物の葉,枝,幹などに産みつけられる。孵化(ふか)した1齢幼虫は,多数の小さなとげに覆われている。この幼虫は,クモを探してすばやく体内に穿入(せんにゆう)し,書肺に付着して休眠状態となる。クモが終齢期に近づくと,幼虫は脱皮し,急速にクモの体液を消化して,クモの体外に出てクモの糸や体に付着して蛹化(ようか)する。羽化前のさなぎはクモの糸に保護されることになる。成虫の寿命は1~6週間である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コガシラアブ」の意味・わかりやすい解説

コガシラアブ
Acroceridae; small-headed fly; spider-parasite fly

双翅目コガシラアブ科に属する昆虫の総称。小さい頭部に対して,著しく膨出した胸部をもつアブ類の1つ。体長7~10mm程度。頭は胸部に対して下方につき,ほとんど複眼で占められる。胸部は大きく球形。腹部は太めで,紡錘形または球形。肢は細く,節先端には対になった褥板 (じょくばん) のほか,中央にも褥板がある。成虫は花に集り吸蜜する。幼虫は尾端に吸盤と長い剛毛をもち,クモとその卵嚢に寄生し,それらに食入る。温帯に多く,日本には数種を産する。セダカコガシラアブ Oligoneura nigroaeneaは,体長6~8mm,黒藍色で,真鍮色の光沢があり,北海道,本州に分布する。 (→双翅類 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コガシラアブ」の意味・わかりやすい解説

コガシラアブ
こがしらあぶ / 小頭虻
spider-parasite flies
small-headed flies

昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目アブ群コガシラアブ科Acroceridaeの総称。この科は頭部は球形で小さく、胸部に対して著しく下方につき、胸部は大きく、背方に著しく膨出している。口吻(こうふん)は小さいものと、よく発達して体長よりも長いものがある。はねは小さく、横脈はほとんどない。はねの基部後方には胸弁がよく発達していて袋状となる。脚(あし)は細く、末端には1対の褥盤(じょくばん)のほかに、中央褥盤が発達する。腹部は太く、紡錘形またはほとんど球形に近い種類もある。成虫は春に花に集まり蜜(みつ)を吸うが、幼虫は寄生性で、クモやその卵嚢(らんのう)につく。

[伊藤修四郎]

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