コバラミン(読み)こばらみん(英語表記)cobalamin

デジタル大辞泉 「コバラミン」の意味・読み・例文・類語

コバラミン(cobalamin)

ビタミンB12の異称。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コバラミン」の意味・わかりやすい解説

コバラミン
こばらみん
cobalamin

5,6-ジメチルベンズイミダゾール5,6-dimethylbenzimidazoleを塩基として含む、自然界にもっとも普遍的に存在するコバミド補酵素総称Cblと略記される。ビタミンB12は、狭義ではシアノコバラミンをさし、広義ではビタミンB12類の総称としてコバラミンと同義に用いられる。コバラミンの誘導体としてはシアノコバラミン、ヒドロキソコバラミンニトリトコバラミン、クロロコバラミン、メチルコバラミンアデノシルコバラミン補酵素B12)、スルファトコバラミンなどがある。

 1926年にマイノットマーフィー悪性貧血は動物の肝臓の大量摂取で治療できることを発見し、1948年にはD・M・C・ホジキンが抗悪性貧血因子であるビタミンB複合体の結晶化に成功して、1955年にその複雑な三次構造が解明された。コバラミンは中心に1個のコバルト原子をもつコリン環からできているが、このコバルト原子は、+1、+2、+3の酸化状態となりうる。このうち+1型(Co+)が活性をもつ補酵素を生成する。Co+はアデノシン三リン酸(ATP)の5'炭素原子を攻撃し、三リン酸基を置換し、5'-デオキシアデノシルコバラミン5'-deoxyadenosyl-cobalaminを生成する。これが補酵素B12である。補酵素B12はフリーラジカル(遊離基)を供給し、水素などの分子内移動にかかわって、次の3種の反応を触媒する。(1)分子内の配置換え、(2)メチオニン合成のようなメチル化、(3)リボヌクレオチドデオキシリボヌクレオチドへの還元である。悪性貧血は内因子の欠損によりコバラミンの吸収が損なわれるためにおこる。

 コバラミンは細菌によってつくられ、動物はこれを利用する。臓器のなかでは肝臓にもっとも多量に含まれ、その大半がアデノシルコバラミンの形で存在する。ヒト血漿(けっしょう)ではメチルコバラミンがもっとも高い割合で存在する。食品では、ウシ肝臓のほか、卵黄、魚肉中に多く含まれている。

 コバラミン欠乏では、その原因が吸収障害によるものでも、またコバラミンの末梢(まっしょう)への運搬の障害であっても、ともに先天性の代謝病であるホモシスチン尿症とメチルマロン酸血症が生じる。

[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]

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改訂新版 世界大百科事典 「コバラミン」の意味・わかりやすい解説

コバラミン
cobalamin

ビタミンB12類の別名。巨大環状配位子コリンが酸化数Ⅲのコバルトに配位して平面を形成し,環の一部に結合した複雑なリン酸基,糖,有機塩基から成る置換基部分の有機塩基(5,6-ジメチルベンゾイミダゾール)が平面の片側からコバルトに配位し,第六の配位子Xが平面の反対側に配位した錯体の総称。X=CN,すなわちシアノコバラミンがビタミンB12,X=OH,すなわちヒドロキソコバラミンがビタミンB12bである。補酵素B12ではX=5′-デオキシアデノシル基で,5′-炭素原子が直接コバルトに結合しており,生命系中で見いだされた最初の有機金属化合物である。この結合は反応活性で,基質はこの付近で化学変化を受けるものと考えられている。自然界ではビタミンB12は主として補酵素B12として存在するらしい(配位子CNは分離操作の過程で入る)。ビタミンB12類は抗悪性貧血作用をもつ。
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化学辞典 第2版 「コバラミン」の解説

コバラミン
コバラミン
cobalamin

ビタミン B12 の別称.三価のコバルトを中心金属として,まわりにコリン核が配位して平面を形成し,平面の下からヌクレオチドに結合したベンゾイミダゾールのNが配位し,上方にはCo-Cのσ結合を介してデオキシアデノシル基,シアノ基,メチル基などが配位したものを総称する.上方配位子の種類により,アデノシルコバラミン(ビタミン B12 補酵素),シアノコバラミン(いわゆるビタミン B12),メチルコバラミンなどとよばれる.天然にはこれらのほかに,コリン核の置換基の変化,上方配位子の変化などにより,多数の類縁化合物が存在し,またそれらを人工的に修飾することも可能である.たとえば,シアノコバラミンを水溶液中で還元剤を用いて還元すると,B12S とよばれる二電子還元体を生じる.これは種々の有機化合物と反応して,メチル,アセチル,アルコキシカルボニル,エチニル,ビニルなどの各コバラミンに誘導することができる.人工的なモデルとして,一連のコバロキシムが合成され,その反応性が研究されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「コバラミン」の解説

コバラミン

 ビタミンB12の同族体のことで,シアノコバラミン,ヒドロキシコバラミン,アデノシルコバラミン,ニトリトコバラミン,アクオコバラミンなどがある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のコバラミンの言及

【ビタミン】より


[ビタミンB12
 肝臓に含まれる抗悪性貧血因子として単離されたB群ビタミンの一つである。コバラミンcobalaminとも呼ばれ,中心にコバルトイオンをもっている。植物ならびに酵母以外の生物に広く分布し,とくにウシ肝臓,卵黄,魚肉中に多く含まれている。…

【ビタミン】より


[ビタミンB12
 肝臓に含まれる抗悪性貧血因子として単離されたB群ビタミンの一つである。コバラミンcobalaminとも呼ばれ,中心にコバルトイオンをもっている。植物ならびに酵母以外の生物に広く分布し,とくにウシ肝臓,卵黄,魚肉中に多く含まれている。…

※「コバラミン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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