「協力」「協同」「共同研究」の意味で、美術では作品の「合作」や「協力関係」を指す。例としてはピカソとブラックの協同や、デュシャンとマン・レイの共同制作などが挙げられる。デュシャンの『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』(通称『大ガラス』)(1915~23)に積もった埃をマン・レイが撮影して『埃の培養』(1920)という作品を制作したり、『ローズ・セラビ』としての女装を撮影した作品も含めて、デュシャンとマン・レイの共同作業は持続的に行われていた。
第二次世界大戦後、現代美術でコラボレーションはよく行われるようになり、数多くのアーティストが、一時的な組み合わせから得られる刺激的触発を創造性に組み入れた。また、一時的な共同作業ではなく永続的なチーム・ワークとして合作を行っているアーティストもいる。イギリスの男性2人組ユニット、ギルバート・アンド・ジョージは、1967年にロンドンのセント・マーチン美術学校で出会って以来パートナーシップによって作品を制作している。彼らは自身が作品となる「生きる彫刻」というライブ・パフォーマンスを発表して注目を集め、なかでも彼らが歌うパフォーマンス『歌う彫刻』(1969)は有名である。やはりイギリスのコンセプチュアル・アーティスト・グループ、アート・アンド・ランゲージは60年代後半から活動を始め、彼らが発行した『アート/ランゲージ』Art/Languageという雑誌を通して評論家や美術史家、アーティストたちがアートについて語り合った。このグループにはアメリカのコンセプチュアル・アーティスト、ジョセフ・コスースが参加していた。またテレビ番組ふうの美人コンテストやエイズ・キャンペーンのようなイベント活動を行うカナダのジェネラル・アイディアも、3人で2ユニットを形成するコラボレーション・アーティストである。
コラボレーションのなかには、1950年代から活動を始めているベッヒャー夫妻や、60年代に夫婦で活動を始め、その後、成長した子どもたちも参加しているイギリスのボイル・ファミリーのように夫婦や家族といった関係から成立するものも少なくない。また、アメリカのマイク・アンド・スターンMike & Doug Starn(ともに1961― )、イギリスのジェーン・アンド・ルイーズ・ウィルソンJane and Louise Wilson(ともに1967― )、守章(もりあきら)(守喜章(よしあき)・守雅章(まさあき)。ともに1967― )などは、双子のコラボレーション・アーティストである。
アーティストのコラボレーション活動は、アメリカ、スミソニアン美術館で開催された「20世紀の芸術的コラボレーション」展(1984)やアメリカでの巡回展「チーム・スピリット」(1990~92)で具体的活動と作品が紹介され、その豊かな創造性が示された。
[嘉藤笑子]
『篠原資明著「共同制作美術の時代へ 『ティーム・スピリット』――コラボレーションの線分たち」(『美術手帖』1991年2月号「特集コラボレーティヴ・アート」・美術出版社)』▽『ウンベルト・エーコ著、篠原資明・和田忠彦訳『開かれた作品』(2002・青土社)』
出典 (株)ヤマハミュージックメディア音楽用語ダスについて 情報
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