日本大百科全書(ニッポニカ) 「マン・レイ」の意味・わかりやすい解説
マン・レイ
まんれい
Man Ray
(1890―1976)
アメリカのダダとシュルレアリスム芸術家。おもにパリで活動し、絵画、彫刻、オブジェ、写真、映画、ブック・デザインなどを表現手段としたが、とくに写真では、彼自身が案出し命名した新技法「レイヨグラフ」「ソラリゼーション」などを用いて新しい芸術表現の可能性を切り開き、いわゆる前衛写真の先駆者となった。
フィラデルフィアに生まれ、ニューヨークに出て地域センターの公開講座で絵を学び、A・スティーグリッツの画廊に出入りするようになる。1915年、そこでフランスのダダイスト、デュシャンを知り、ピカビアとともにそのサークルに加わり、ニューヨークにおけるダダの運動を推進させた。1921年、デュシャンの後を追ってパリに移り、パリのダダイストと合流、アンドレ・ブルトンのシュルレアリスム運動に参加して、その重要なメンバーとして活躍した。この間、モンパルナスのモデル、キキと同棲(どうせい)したり、第二次世界大戦中はナチスの迫害を避けて一時帰米(1940~1946)したが、多才なシュルレアリストとして波瀾(はらん)の生涯をパリで閉じた。
代表作として、絵画に『綱渡りの踊り子は影を伴っている』(1916・ニューヨーク近代美術館)、オブジェに『贈り物』(1921)、前衛映画にロベール・デスノスの詩の映像化『ひとで』(1928)などがある。
[平木 収]
資料 監督作品一覧
理性への回帰 Le retour à la raison(1923)
ひとで L'étoile de mer(1928)
サイコロ城の秘密 Les mystēres du château du Dé(1929)
『『マン・レイ写真集』(1980・朝日新聞社)』▽『飯島耕一訳『写真家 マン・レイ』(1983・みすず書房)』▽『千葉成夫訳『セルフポートレイト――マン・レイ自伝』(1984・美術公論社)』