日本大百科全書(ニッポニカ) 「コルチコステロン」の意味・わかりやすい解説
コルチコステロン
こるちこすてろん
corticosterone
副腎皮質ホルモン(ふくじんひしつほるもん)の一つで、糖質代謝促進作用をもつ。1937年にスイスの有機化学者ライヒシュタインとアメリカの生化学者ケンドルがウシの副腎から単離した。一般に動物の副腎静脈血中にコルチゾール(ヒドロコルチゾンともいう)とともにみいだされる。電解質代謝ホルモン(ミネラルコルチコイド)であるアルドステロンの生合成前駆体である。生体内ではデオキシコルチコステロンから11β(ベータ)-水酸化酵素により生成される。イヌ、ネコなどでは副腎から主としてコルチゾールを分泌し、コルチコステロンの量はわずかである。一方ラットやウサギでは17α(アルファ)-水酸化酵素活性がないので、コルチゾールは産生されず、コルチコステロンだけを分泌しており、糖質代謝ホルモンの代表的なものとなっている。このホルモンの作用はコルチゾンに似ているが、糖質代謝作用ははるかに弱く、電解質代謝作用は強い。抗炎症作用、抗アレルギー作用はそれほど強くない。コルチコステロン値が高い場合、コルチコステロン産生腫瘍(しゅよう)、異所性ACTH産生腫瘍、17α-または18-水酸化酵素欠損症などが疑われる。逆に低い場合、アジソン病、脳下垂体機能低下症、クッシング症候群などが疑われる。
[藤本善徳]