副腎皮質ホルモンは生命の維持に必要なホルモンで、健康な人では体の状態に合わせて適切に分泌されています。このホルモンが、何らかの原因で体が必要とする量を分泌できなくなった状態を、副腎皮質機能低下症といいます。
これには、副腎自体の病気による場合と、副腎皮質ホルモンの分泌を調節する
副腎は両側の腎臓の上、左右に2つありますが、両側の副腎が90%以上損なわれるとアジソン病になります。原因として最も多いのは、
副腎皮質ホルモンには、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、男性ホルモンがあります。アジソン病では、主に糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドの欠損症状が現れます。現れる症状はさまざまですが、主なものとして、①色黒、②
自己免疫が関係する
一般的な血液検査、尿検査に加え、ホルモンの検査、腹部CTなどが必要になります。ホルモンの検査は、血液中の副腎皮質ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、尿中に排泄される副腎皮質ホルモンなどを測定するほか、ACTHやACTH放出ホルモン(CRH)を投与した後の副腎や下垂体の反応により、副腎の機能を評価します。そのほか、副腎を損なう原因を調べるため、結核など感染症に対する検査、がんの検査、自己免疫疾患の検査などが行われます。
副腎皮質ステロイド薬を、病気の程度、日常生活に合わせて補充します。通常、1日1~2回の内服ですみますが、けがや発熱などで体に強いストレスがかかる場合は、内服量を増やす必要があります。
アジソン病の初期では副腎皮質の障害が軽度なので、ホルモンの分泌も生活に支障を来さない程度に保たれています。自覚症状もはっきりしたものではなく、気がつかないことがほとんどです。しかし、この状態の時に、けが、発熱などで強いストレスがかかった場合、急性副腎不全を来して危険な状態になることがあります。前述のような症状があった場合、内分泌・代謝を専門とする病院で一度精密検査をしておくことが望まれます。
崎原 哲
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
慢性の副腎(ふくじん)機能不全によっておこる疾患で、1849年イギリスの医師アジソンが発見、1855年に発表した。副腎皮質ホルモンが欠乏するために疲れやすくなり、食欲の低下や体重の減少もみられる。また、皮膚などの色が黒くなり、ことに口中の粘膜に黒いしみができる。女性ではわき毛や陰毛が減少し、男女とも性欲が低下する。原因は自己免疫によるものが多く、副腎の結核や腫瘍(しゅよう)によることもある。血液中の副腎皮質ホルモンを測定し、その値が正常より低ければこの病気の可能性がある。外傷や感染症により、ショック状態に陥ることもあるので注意を要する。副腎皮質ホルモン剤の内服を続けることで、一生元気に生活できる。
[高野加寿恵]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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