サジュウ(英語表記)saj`

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

サジュウ
saj`

アラビア語の修辞上の術語散文を綴る場合に,短い間隔をおいてを合せた言葉を入れていくこと。言い換えれば韻をふんだ美文であるが,詩と異なるのは,いかなる韻律 (メーター) にも従っていないことである。イスラム以前の古代アラビアで早くも発達し,民衆向きの物語,たとえば『アンタル物語』『千一夜物語』などにも盛んに用いられている。イスラム時代以前のアラビアでは神殿に詣でるとき唱えるタルビヤート talbiyāt (一種の御詠歌) ,カーヒン kāhin (巫子) たちの託宣,人を裁く場合の宣告,賢者たちの格言などにサジュウ体が用いられたという。コーランにもしばしばこの体が用いられ,特にメッカ時代の啓示に多い。アラビア語文学としてはマカーマートというジャンルや書簡文などに盛んにサジュウが利用されてきたし,史家のうちにもこれをよく用いる者が現れた。近代ペルシア語やトルコ語その他にも入り,過度の修飾技巧のため文章の明快さが犠牲となる弊害が現れた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

サジュウ
さじゅう
saj‘

アラビア語で押韻散文の意。アラブ詩の原形とみる説がある。定型化した一般のアラブ詩が脚韻と韻律をもっているのに対して、韻律をもたず、脚韻だけからできている。ジャーヒリーヤ時代のカーヒン(巫女(みこ)のこと)が神の託宣を伝えたり、その他の宗教的な説教や演説をしたりするのに用いられた。ムハンマド(マホメット)も啓示を、サジュウを多く用いて伝え、これがコーランの文体の特徴をなしている。そのため彼は、カーヒンとか詩人の同類にみなされたが、「迷う者は詩人に従う。汝(なんじ)は、彼らがあらゆる谷間をさまよい歩く様子を見なかったか、自分では実行もしないことを口にするのを。」(コーラン26―224以下)との啓示を得て、彼らとは一線を引いている。9世紀中葉以降、サジュウはカリフの説教などに用いられ始め、マカーマ文学で頂点に達した。以後今日まで散文修辞法の主要なものの一つとなった。

[池田 修]

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