サッチャリズム(その他表記)Thatcherism

デジタル大辞泉 「サッチャリズム」の意味・読み・例文・類語

サッチャリズム(Thatcherism)

《「サッチャーイズム」とも》英国サッチャー政権が1979年の就任以来とり続けた経済政策。財政引き締めにより「小さな政府」を目指した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サッチャリズム」の意味・わかりやすい解説

サッチャリズム
Thatcherism

イギリス経済再生のため,マーガレットサッチャー首相(在任 1979~90)が打ち出した社会・経済政策の総称。小さな政府を追求し,国有企業の民営化,金融・証券改革など,政府規制の緩和,労働活動の制限などを推し進めてイギリス病から国を立ち直らせた。1979年5月の総選挙で大勝を収めたサッチャー率いる保守党は 1983年の選挙でも圧勝した。この勝利で波に乗ったサッチャー政権は,鉄道をはじめとする国営企業の徹底的な民営化を断行した。のちに新自由主義として知られるようになったサッチャーの経済政策は,アメリカ合衆国が推進していたレーガノミクスと呼ばれる包括的な経済改革に対する世界各国の対応と軌を一にするものだった。イノック・パウエルの自由主義経済とキース・ジョセフの自由市場構想も,保守党,とりわけサッチャー首相に大きな影響を及ぼした。労働党政権と国家に対する失望感の広がりに対応して,サッチャーは多くの国民の願望を吸い上げ,自由と選択の政治を巧みに運営した。1970年代に社会の停滞をもたらした左派政治と労働組合運動の失敗をうけ,時代に即した自由市場重視のサッチャー版新自由主義は,勢いを増した。すでに進行していた産業弱体化とサッチャー政権下の民営化の流れはイギリス社会の様相を変化させ,失業率を大幅に高めたが,これによって,政府,労働組合,産業界が協調して国家主導の資本主義を発展させた国家コーポラティズムとも呼ばれる戦後体制が事実上終焉した。この協調体制から脱却したイギリスの動きは,1989年の共産主義崩壊後の中央および東ヨーロッパの展開の先ぶれとなった。

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