日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーガレット」の意味・わかりやすい解説
マーガレット
まーがれっと
marguerite
[学] Argyranthemum frutescens (L.) Sch.Bip.
Chrysanthemum frutescens L.
キク科(APG分類:キク科)の多年草。カナリア諸島原産。種名のfrutescensは低木状の意味で、茎の基部が木質化することによるが、和名のモクシュンギク(木春菊)も同様の理由による。全株無毛で、茎は高さ約1メートルで、よく分枝する。葉は互生し、灰緑色または鮮緑色の肉質で、2回羽状に深裂し、裂片は広線形で先はとがる。冬から春、茎上部の葉腋(ようえき)から花茎を出し、径約5センチメートルの頭状花を頂生する。頭花は一重咲きで、舌状花は白色、管状花は黄色が普通であるが、八重咲きの品種や、舌状花が淡黄色の品種もある。一般に広く栽培される白色花の品種は染色体数2n=27で、基本数n=9の三倍体で不稔(ふねん)であるが、近年2n=18の稔性の品種が導入されている。
切り花にするほか、鉢植えおよび花壇植えにする。栽培は排水のよい砂質壌土が適し、多少水分の多い所でよく育つ。寒さには弱く、冬は暖地以外ではフレームか温室で育てる。繁殖は挿芽により、5~6月に挿し、8~9月に定植し、冬季の切り花にするほか、挿芽活着後に鉢上げする。連作すると根腐(ねぐされ)病や萎凋(いちょう)病にかかりやすくなるので、連作は避ける。
[岡田正順 2022年4月19日]
文化史
マーガレットの名で扱われる花にはフランスギクや、古くはヒナギクも含まれ、混乱がみられる。カナリア諸島原産のマーガレット(パリス・マーガレット)は、16世紀中ごろ(別説によると17世紀末)にヨーロッパに伝わったとされ、それ以前のマーガレットはヒナギクの場合が多い。イギリスのヘンリー6世の妃のマーガレット・オブ・アンジューが紋章に使ったのもヒナギクである。一方、日本では現在もしばしばマーガレットと俗称されている耐寒性のあるフランスギクは、本来ヨーロッパに自生し、ヒナギクとともにヨーロッパでは中世以前はマーガレットとよばれた。マーガレットの名は、白い花を見立てたギリシア語の真珠マーガライトmargaritesに基づくとされるが、7月20日の聖マーガレットの日の近くに開花するからという異説もある。
[湯浅浩史 2022年4月19日]