サラゴサ(読み)さらごさ(英語表記)Zaragoza

精選版 日本国語大辞典 「サラゴサ」の意味・読み・例文・類語

サラゴサ

(Zaragoza)
[一] スペイン北東部、アラゴン地方の州。
[二] スペイン、サラゴサ州の州都。古代イベリア人の町サラドゥバにはじまり、一二世紀初頭まではムーア人の拠点、以後アラゴン王国の首都として栄えた。

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デジタル大辞泉 「サラゴサ」の意味・読み・例文・類語

サラゴサ(Zaragoza)

スペイン北東部の商工業都市。古代イベリア人の町サラドバに始まり、12世紀初頭まではムーア人の拠点、その後アラゴン王国の首都として栄えた。人口、都市圏67万(2008)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サラゴサ」の意味・わかりやすい解説

サラゴサ
さらごさ
Zaragoza

スペイン北東部、アラゴン地方サラゴサ県の県都。エブロ川中流右岸、標高200メートルに位置する。人口61万4905(2001)。首都マドリードをはじめ、地中海沿岸のバルセロナバレンシア、ビスケー(ビスカヤ)湾に臨むビルバオなどの重要都市からほぼ250キロメートルの等距離にあり、鉄道、幹線道路の要地。ピレネー山脈中のソンポール峠(1622メートル)を通じてフランスとも結ぶ。エブロ川およびインペリアル運河によって灌漑(かんがい)された豊かな園芸農業地帯の経済的中心地であり、1474年創立の大学をもつ文化の中心地としても栄えている。1964年以降、開発政策の拠点として工業化が推進され、建設、機械、化学、食品などの工業が発展し、人口の急増により市街地が拡大している。モスク跡に建てられたラ・セオ大聖堂(12~16世紀)は、ロマネスクゴシックイスラムバロックの諸様式の混合建築として知られる。その北西にあるゴシック様式のデル・ピラール寺院(17世紀)とマリア像(14世紀)も名高い。イスラム時代の城塞(じょうさい)も残る。

[田辺 裕・滝沢由美子]

歴史

紀元前1世紀末にローマが征服するまでイベリア人が居住しサルドゥバSaldubaとよばれていた。アウグストゥス帝はここにカエサルアウグスタCaesaraugustaという軍事的植民地を形成、そのアラビア語形サラコスタSarakostaが現在の地名の由来である。当時、商業的、軍事的中心地として栄えたが、5世紀にスエビ人に降伏、さらに6世紀に西ゴート人の支配下に入った。8世紀にイスラム教徒が占領、これと闘ったシャルルマーニュカール大帝)が一時包囲し、その武勲詩ロランの歌』に登場する。12世紀初頭アルフォンソ1世によって奪回され、その後アラゴン王国の首都となった(1118)。18世紀に食糧暴動が起こったが、1808~09年にはフランス侵入軍に抵抗した。スペイン内戦では早くから反乱派が占領、東部戦線の前線となった。

[深澤安博]

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改訂新版 世界大百科事典 「サラゴサ」の意味・わかりやすい解説

サラゴサ
Zaragoza

スペイン北東部,アラゴン地方にある同名県の県都。人口59万3204(2001)。エブロ川の右岸に位置し,ウエルバ川との合流点に近い。ピレネー山脈の豊富な水資源にめぐまれた工業都市であり,周辺の農産物の集散地でもある。かつてはサルドゥバと呼ばれるイベロ族の集落であり,ローマ時代にはカエサルアウグスタの名でタラコネンシス州都であった。452年にゲルマンのスエビ族に,466年に西ゴート族に,そして714年(あるいは716)にはイスラム教徒に征服されたが,1118年キリスト教徒軍によって奪回され,アラゴン王国の首都となった。16世紀,フェリペ2世の時代には中央集権政策に反発したため,従来からの特権を剝奪された。スペイン王位継承戦争(1700-13)にもオーストリア側について敗れたため,特権回復は成らなかった。この戦争では両軍からの侵入を受け,またスペイン独立戦争でも1808年と09年の2度激戦地となったことから,サラゴサは〈不死の町〉と呼ばれる。19世紀半ばからはそれまでの農業中心から工業中心に変わり,現在にいたっている。アナルコサンディカリズムのたいへん強い都市であったが,1936年に始まるスペイン内乱では反乱軍側について戦った。現在,陸軍士官学校が設立されている。旧市街にはゴシック様式の聖堂(12~16世紀)があり,これと広場を隔ててピラルの聖母教会(17~19世紀)がある。ピラルの聖母は全スペインの守護者で,ピラルの名はたいへんポピュラーな女子の洗礼名になっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サラゴサ」の意味・わかりやすい解説

サラゴサ
Zaragoza

スペイン北東部,アラゴン州の州都,サラゴサ県の県都。エブロ川の右岸に位置する。古くから商業,軍事上の要地で,712年ムーア人が占領,1118年からアラゴン王国の首都。 1809~14年にはナポレオン軍に占領された。現在は工業の一中心地で,ピレネー山脈から電力,大西洋岸の港ロータ (カディス県) からパイプラインで石油が送られ,農業機械,鉄道車両,繊維,ガラス,化学などの工業が行われる。フランスからスペイン各地にいたる道路,鉄道が集中する商業中心地でもある。イスラム時代の最も美しい建築物の一つといわれるアルハフェリア宮殿,ゴシック=ロマネスク様式の大聖堂 (1119~1520) ,1474年創立のサラゴサ大学など,歴史的建造物が多い。人口 58万 6219 (1991推計) 。

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百科事典マイペディア 「サラゴサ」の意味・わかりやすい解説

サラゴサ

スペイン北東部,アラゴン地方の同県名の県都。エブロ川右岸にあり,豊かな農業地帯の中心で,食品加工・機械工業が行われる。12世紀のゴシック式聖堂,大学(1542年創立)がある。古代ローマ時代は軍事基地で,8―12世紀はイスラム支配の下で繁栄,12世紀にキリスト教徒が奪回した後,アラゴン連合王国の首都。スペイン内乱では反乱軍側のフランコについた。67万8115人(2011)。

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世界大百科事典(旧版)内のサラゴサの言及

【アラゴン】より

…スペイン北東部の地方。サラゴサ,ウェスカ,テルエルの3県からなり,人口120万8474(1988)。主都はサラゴサ。…

※「サラゴサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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