改訂新版 世界大百科事典 「サリュート」の意味・わかりやすい解説
サリュート
Salyut
旧ソ連の有人宇宙ステーション。宇宙空間における人間の長期滞在の研究,天体観測,各種の実験などを目的としており,1983年5月現在,7号まで打ち上げられている。まず無人で地球を周回する軌道上に乗せた後,宇宙飛行士を乗せたソユーズが打ち上げられてドッキング,宇宙飛行士が移乗する。宇宙飛行士の帰還もソユーズによって行われる。1971年4月19日に打ち上げられたサリュート1号は人類初の宇宙ステーションとなり,ソユーズ11号とドッキング,3人の宇宙飛行士は約570時間の宇宙滞在記録を作ったが,地球帰還の際,事故で死亡してしまい,宇宙活動始まって以来の大惨事となった。サリュート7号(1982年4月打上げ)では237日の宇宙滞在記録を立て,無重量状態が人体に与える影響については多くのデータが集められた。サリュートにおいて特筆すべきことは,ソ連以外の国の宇宙飛行士が参加したことである。とくに77年から81年にかけて運用されたサリュート6号には計33人の宇宙飛行士が訪問しているが,この中にはチェコスロバキア,ポーランド,東ドイツ,ハンガリー,ベトナム,キューバ,モンゴル,ルーマニアの宇宙飛行士各1人が含まれていた。サリュート6号はこのように国際宇宙ステーションとして活躍しただけでなく,数多くの宇宙実験の場所としても利用された。なお,サリュートは〈祝砲〉の意。
執筆者:広浜 栄次郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報