日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンカクガイ」の意味・わかりやすい解説
サンカクガイ
さんかくがい / 三角貝
three-sided shell
軟体動物門二枚貝綱サンカクガイ科に属する二枚貝の総称。トリゴニアの名でもよばれ、この場合も広義には科全体をさす。この科Trigoniidaeは中生代三畳紀に出現し、ジュラ紀から白亜紀に栄えた二枚貝で、浅海の砂底であった所に殻が多数集まって化石になった状態での産出が多く、中生代の標準化石となっている。白亜紀以後は急に衰え、新生代の第三紀にはエオトリゴニア属Eotrigoniaだけとなり、さらに、現生ではシンサンカクガイ属Neotrigoniaがオーストラリアにわずか7種すむにすぎない。
サンカクガイ類はいずれも殻が厚く、ほぼ三角形状を呈していて、前縁は丸みがあるが、後縁は細くなってしばしば裁断したようになっている。殻表には著しい肋(ろく)や結節が成長脈に従って走るが、種によっては放射状あるいは斜めの彫刻もある。後背部は角(かど)をつくって明瞭(めいりょう)にくぎられ、ほかの部分とは異なる彫刻がある。内面は真珠光沢が強く、殻頂には前後に分かれた逆V字形の歯があり、歯の上は細かく刻まれている。
現生種中で代表的なシンサンカクガイ(新三角貝)N. margaritaceaはオーストラリア南東岸およびタスマニア島の内湾砂泥底に多い。殻長33ミリメートル、殻高31ミリメートル、殻幅10ミリメートルに達する。本種の殻には、この類の特徴が次のように顕著にみられる。殻形は丸みのある三角形で、後縁はまっすぐ裁断されたようになる。前縁は丸い。殻表には約20本の丸いこぶ状の節(ふし)のついた放射肋がある。かみ合せには前後に分かれた逆V字形の歯があり、その上は細かく刻まれている。内面は紫色を帯びており、真珠光沢が著しく強い。
なお、この類は前述のように2億年以上も前の生き残りで、「生きている化石」の一つとして著名である。
[奥谷喬司]