ザンクトガレン(読み)ざんくとがれん(その他表記)Sankt Gallen

デジタル大辞泉 「ザンクトガレン」の意味・読み・例文・類語

ザンクト‐ガレン(Sankt Gallen)

スイス北東部、ザンクトガレン州州都。612年、アイルランドの隠修士ガルスが建てた僧院に起源する。8世紀から11世紀にかけて中世ヨーロッパにおける文化の中心地の一つだった。18世紀半ばに改築された大聖堂は同国屈指のバロック様式の建築として知られ、旧修道院、修道院図書館とともに、1983年に世界遺産文化遺産)に登録された。フランス語名、サンガル

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザンクトガレン」の意味・わかりやすい解説

ザンクト・ガレン
ざんくとがれん
Sankt Gallen

スイス北東部、ザンクト・ガレン州の州都。標高670メートルの地にある。人口6万9909(2001)。フランス語名サン・ガルSaint Gall。8世紀にベネディクト会のザンクト・ガレン修道院ができ、8~11世紀にはヨーロッパの重要な文化中心の一つであった。1180年に都市権を得、活動的な領主司教の影響下にあって政治的よりも経済的に重要な町として発展を続けた。古い建築にみるべきものがあり、18世紀なかばに再建された大聖堂はスイスでもっとも美しい後期バロック様式の建築として有名で、その二つの塔は町のシンボルとなっている。

 ザンクト・ガレン州は面積2026平方キロメートル、人口45万2600(2001)。州内にはグラールスアルプス、アッペンツェル・アルプスがあり、これらの高地ではライン川、ゼーツ川、リント川の河谷平野とともに牧畜を中心とした農業が盛んである。河谷はフェーン風の通り道で、野菜、トウモロコシ、タバコ、ブドウなどが栽培される。この州はチューリヒと並んで早くから東スイスの工業化の中心であり、13世紀にザンクト・ガレン市に始まり周辺に広がった亜麻(あま)織物業の伝統が、19世紀に紡績、刺しゅう工業をおこし、同じころ鋳物・機械工業をも立地させた。

[前島郁雄]


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改訂新版 世界大百科事典 「ザンクトガレン」の意味・わかりやすい解説

ザンクト・ガレン
Sankt Gallen

スイス連邦を構成するカントン(州)およびその州都名。州人口46万1810(2006)。州都人口7万0375(2006)。アイルランドの修道士ガルスの創建した修道院の門前市から発達した。1180年修道院長の諸権限を残したまま帝国都市となる。14世紀初頭スイスやシュワーベン地方の諸都市と同盟し,大幅な自治権を獲得。スイスの他都市と異なって農村領域を支配することができなかったため,亜麻布織工業とその製品販売に力を注ぎ,東スイスの経済的中心地となる。中世以来の織物業の伝統を背景に,いち早く木綿工業の産業革命化に成功し,ナポレオン大陸封鎖のもとで繁栄を誇った。19世紀中葉以降ヨーロッパの販路が行き詰まり,海外(南・北アメリカ,インド)に進出。1859年(安政6)通商交渉のために日本に最初に派遣されたスイス使節は,ザンクト・ガレンの商業局の資金援助を受けており,日本における綿製品の販路拡大の可能性をさぐるものであった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ザンクトガレン」の意味・わかりやすい解説

ザンクトガレン
Sankt Gallen

スイス北東部,ザンクトガレン州の州都。ボーデン湖の南に位置する。古くからリネン,綿織物工業が発達し,20世紀初めには刺繍の中心地として世界的に有名。今日では伝統産業のほかに既製服,織物,ガラス,金属製品などの近代産業も導入されている。 612年にケルト人の修道士聖ゴール (ドイツ語でザンクトガレン) がこの地に庵を結んだ。のちにそれがベネディクト会修道院に発展し,同修道院は 11世紀頃まではアルプス以北における最も重要な教育施設であった。 1311年自由都市となる。 1755~69年建立の修道院聖堂は,スイス有数のバロック建築で,ロココ風大広間をもつ図書館は 2000点に及ぶ中世の古写本,1650冊のグーテンベルク時代の印刷本などを所蔵,1983年世界遺産の文化遺産に登録された。人口7万 3367 (1991推計) 。

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百科事典マイペディア 「ザンクトガレン」の意味・わかりやすい解説

ザンクト・ガレン

フランス名サン・ガルSaint-Gall。スイス,ボーデン湖とチューリヒ湖の間,ドイツ国境近くの同名州の州都。ザンクト・ガレン修道院を中心に発達。修道院付属の教会,古写本や象牙細工で著名な図書館などのバロック建築がある。刺繍(ししゅう)を特産し,繊維,チョコレート製造,機械工業が行われる。7万2040人(2008)。

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