日本大百科全書(ニッポニカ) 「シクロヘキサノン」の意味・わかりやすい解説
シクロヘキサノン
しくろへきさのん
cyclohexanone
脂環式ケトンの一つ。フェノールをニッケル系触媒を用いて水素化する方法によっても得られるが、1939年アメリカのデュポン社により開発されたシクロヘキサンの酸化による合成法が工業的製法の主流となっている。同法では、シクロヘキサンをコバルト系触媒やホウ酸の存在下で空気中の酸素により酸化してシクロヘキサノンとシクロヘキサノールの混合物を得ている。ハッカに似た香りをもつ無色の液体で、多くの有機溶剤と任意の割合で混じり合い、水にもかなり溶ける。6,6-ナイロンの原料であるアジピン酸や6-ナイロンの原料であるカプロラクタムの合成原料となるので、ナイロン合成繊維の製造の中間体として重要である。このほかに、アセチルセルロース、農薬、塗料などの溶剤としても使われている。
[廣田 穰]