シクンシ(読み)しくんし

改訂新版 世界大百科事典 「シクンシ」の意味・わかりやすい解説

シクンシ (使君子)
Rangoon-creeper
Quisqualis indica L.

アフリカ,東南アジアからニューギニアの熱帯に広くみられるシクンシ科の大きな常緑の木性つる植物で,花が美しく,果実カイチュウ駆虫剤,整腸剤として用いられるため古くから各地で植えられ,真の自生地がはっきりしなくなっている。石垣島,西表島でも植えられたり,またそれが一部野生化している。幹の下部は直立し,上方はつる状になる。葉は対生または部分的に互生し,葉柄1~2cm,葉身は紙質でうすく,長さ7~14cmの楕円形で,全縁。短い穂状花序に多数の芳香のある花がつく。花は径2~4cmあり,花弁は5枚で,朝開きはじめは白色で,夕方には紅色となる。長さ4~7cmの,一見花柄のようにみえる細長い管状の萼筒があり,これによって花が下向きに垂れる。おしべは10本。果実は長さ2.5~4cmの楕円状卵形で,暗褐色に乾いて熟し,中に1個の種子がある。茎葉が無毛のものをインドシクンシといって区別することがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シクンシ」の意味・わかりやすい解説

シクンシ
しくんし / 使君子
[学] Combretum indicum (L.) DeFilipps
Quisqualis indica L. var. villosa Clarke

シクンシ科(APG分類:シクンシ科)のつる性常緑樹。カラクチナシともいい、種としては中国の揚子江(ようすこう)以南ミャンマービルマ)、フィリピン、インドに分布し、葉に毛のないものをインドシクンシQ. indica L.とし、中国南部に産する毛のあるものをその変種とすることもある。葉は対生し、短い葉柄があり、長楕円(ちょうだえん)形。全縁で長さ5~12センチメートル、幅3~6センチメートル。葉の先端は鋭先形である。落葉時に葉柄の基部は残存して堅い刺(とげ)となる。夏から秋にかけて穂状花序を頂生し、十数個の花を対生する。萼(がく)筒は7~9センチメートルほどに細長く伸びて中ほどで下垂するが、緑色なので花柄のようにみえる。先端は浅く5裂し、花期に反曲する。花弁は5個、倒卵形で先端は丸く、白色から紅色に変わる。雄しべは10本、雌しべは1本。果実は黒褐色の紡錘形で堅く、5稜(りょう)があり、長さ2.5~4センチメートル、幅1.2~2.3センチメートル。成熟すると先端が裂ける。中に白色の種子1個があり、これを薬に用いる。回虫駆除に多用されるが、子供の疳(かん)、皮膚病、下痢、消化不良、腹痛などにも使う。

[長沢元夫 2020年8月20日]

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