担子菌類キシメジ科のキノコ。ホンシメジとも呼び,美味な食用キノコである。かさは径2~8cm,はじめ半球形,後まんじゅう形から平らに開く。表面はねずみ色~淡灰褐色。かさの縁ははじめ内側に強くまく。肉は白色で緻密(ちみつ)。ひだは茎に湾生またはやや垂生し,白色~淡いクリーム色。茎は高さ3~8cm,白色で下部はとくり状に膨らむ。胞子は球形,大きさは4~6μm。秋,コナラ林またはコナラ・アカマツ混交林内の地上に群生,叢生する。ナラ類と菌根を形成する菌なので人工栽培は難しい。分布は北半球温帯以北。汁物,付け焼きなど淡白な料理にあう。なお,栽培地の名を冠して○○シメジとして市販されているものの多くはヒラタケなどを人工栽培したもので,本種とは異なる。
執筆者:古川 久彦
〈匂(にお)いマツタケ,味シメジ〉といわれ,昔から美味なキノコとされてきた。古くは〈志女治〉などとも書かれ,《異制庭訓往来》などに名が見える。《料理物語》(1643)には,汁や煮物によいとされており,ほかに揚物,なべ物の具,たきこみ飯,土瓶蒸し,バターいためなどにも適する。成分は水分92.5%,タンパク質2.1%,脂質0.3%,炭水化物4.4%,灰分0.7%,ビタミンB20.50mg,ナイアシン9mgで,比較的にビタミンB2,ナイアシンが多い。現在ホンシメジ,シメジとして市販されているものは,シメジ科のヒラタケまたはシロタモギタケの栽培品である。
執筆者:菅原 龍幸
ホンシメジの近縁種に,茎が塊茎状の太い株から多数はえているセンボンシメジ(シャカシメジ,カブシメジ,コモチシメジともいう)L.fumosum(Fr.)Ortonがある。これは秋にホンシメジよりやや早く広葉樹林あるいはマツとの混交林に発生する。ホンシメジよりやや肉がやわらかいが,味はかわらない。
執筆者:古川 久彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
日本の野生食用キノコの双璧(そうへき)であるシメジとマツタケには、「におい松茸(まつたけ)、味しめじ」といった表現がよく用いられるが、分類的にみると、シメジという名はホンシメジ、シャカシメジ、ハタケシメジなどの区別がないころの呼び名であり、いわばマツ、サクラというような総合名ということができる。しかし、「味しめじ」のシメジはホンシメジをさしており、しばしばシメジがホンシメジと同一に扱われる。
キノコの和名にシロシメジ、カキシメジ、サクラシメジなどがあるのは、シメジを総合名としてとらえ、シメジの前にそれぞれの種の色や形態的・生態的特徴を表すことばをつけたものである。このようなシメジの名をもつキノコは、一般に傘の肉は厚くて充実し、茎もやや太く(円柱状またはとっくり形)、傘と同様に肉が充実する。ひだは茎に直生ないし湾生するものが多い。こうした形をとるキノコを「シメジ型のキノコ」という。このタイプのキノコはマツタケ目キシメジ科のキシメジ属Tricholoma、ホンシメジ属Lyophyllum、ムラサキシメジ属Lepistaに含まれるものが多いが、まったく縁が遠いサクラシメジ(アカヤマタケ科)、アブラシメジ(フウセンタケ科)、イッポンシメジ(イッポンシメジ科)などもある。
また、ヒラタケの栽培品種が「シメジ」または「○○シメジ」の名で市販されており、これを真のシメジ(ホンシメジ)と誤解している人が多い。栽培ヒラタケの若いものは、外観がホンシメジに似ていることに着目したある栽培家が、人口に膾炙(かいしゃ)した(広く知れ渡った)シメジの名で売り出し、宣伝の労を省いたものである。なお、ホンシメジは菌根菌なので栽培ができない。
[今関六也]
シメジは前述のように多種類のキノコをさしているが、ここではホンシメジについて解説する。成分は、水分92.5%、タンパク質2.1%、脂質0.3%、炭水化物では糖質が3.7%と繊維が0.7%、灰分0.7%である。料理は、味わいを生かして和(あ)え物や蒸し物、汁物、鍋(なべ)料理などに使う。しめじ飯とするには、まずシメジを湯がいてから煮つけ、その煮汁を入れて米を炊き、炊き上がりに煮たシメジを加え、蒸してから混ぜる。ホンシメジは現在のところまだ栽培できないので、山採りによるしかなく、市場での値段は高い。
[星川清親]
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