日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャオシンチウ」の意味・わかりやすい解説
シャオシンチウ
しゃおしんちう / 紹興酒
中国の代表的醸造酒(黄酒(ホワンチウ))。中国の揚子江(ようすこう)下流域、浙江(せっこう)省の紹興(しょうこう)、杭州(こうしゅう)、蘇州(そしゅう)地方が主産地で、米を主原料としてつくる。日本酒の麹(こうじ)に相当する麦麯(ばくきょく)(麯子ともいう)と、酒母に相当する酒薬(葯)(チウヤオ)と、蒸した糯米(もちごめ)を混ぜて仕込み、発酵させ濾過(ろか)したもの。長期間熟成した紹興酒をわが国では老酒(ラオチウ)とよび、陳年(ちんねん)紹興酒ともいい珍重されている。酒の色は茶褐色で、老香(ひねか)のある、酸味、渋味のきいたドライな酒(甘口もある)である。成分はアルコール分13~17%、酸度は5~9で、日本酒に比してアルコール分はやや弱いが、酸度は3~5倍も多く、色も濃い。酸味を和らげるために氷砂糖を杯に入れて飲むことが多い。紹興酒(しょうこうしゅ)ともいう。
[秋山裕一]
つくり方
つくり方により淋飯酒(リンファンチウ)、攤飯酒(タンファンチウ)、加飯酒(チヤファンチウ)、善醸酒(シャンニャンチウ)などがある。
(1)淋飯酒 蒸し糯米に等量の水を加えて吸水させ(これを淋飯という)、酒薬と混ぜて甕(かめ)に入れ、中央に穴をあけ、残りの酒薬を表面にふりかけて蓋(ふた)をしておく。3日ぐらいすると菌糸が伸び、ときおり穴の中にたまる液を周りにかける。7日ぐらいすると発酵が始まるので、これに麦麯などを加え、蓋をして1~2か月間熟成させ、圧搾し、澱(おり)引き、火入れをして、甕に貯蔵する。酒薬は粳(うるち)白米粉、小麦ふすまと甘草・陳皮など草根木皮を混ぜ、水を加えてさいころ状に練り固め、暖所に放置する。リゾープス、ムコールなどのカビや酵母などの発酵微生物が培養され、一種の酒種(だね)となる。麦麯は掛麹に相当する。小麦を粗砕し、水を混ぜてれんが状に固め、室(むろ)に入れて、夏は1週間、冬は2週間くらいかけてカビを生やしてつくる。
(2)攤飯酒 なまの糯米を20日間くらい水につけっぱなしにしておいたものを使う酒。水につけた糯米を蒸し、麯子を加え、前記の淋飯酒のようにしてつくったもろみと、糯米をつけておいた水とを混ぜ、糖化と発酵を約2か月間行わせ、もろみを搾り、その酒を煮て(火入れ)、甕に貯蔵する。
(3)加飯酒 原料米を多く使った甘口の酒である。
(4)善醸酒 紹興酒を仕込み水としてつくったもの。甘口の熟成した酒で珍重される。わが国でも、日本酒を仕込み水のかわりに使用して醸造した貴醸酒という類似の酒がある。
油漆絵を描いた酒瓶(壺(つぼ))に紹興酒(加飯酒)を入れた老酒に花雕酒(ホワティヤオチウ)がある。女児酒(ニュイアルチウ)は紹興の風習に由来する酒で、女児誕生のおりに仕込み、嫁入りの際に持参させた。
[秋山裕一]
『大谷彰著『中国の酒』(1974・柴田書店)』