スイスの詩人。バーゼルの南の小都市に官吏の子として生まれた。イタリアの詩人アリオストの《狂えるオルランド》に感激し,叙事詩人を生涯の目標とした。バーゼル大学の神学部(プロテスタント)を卒業したが牧師にならず,家庭教師として数年間ロシアで暮らし,帰国して女学校の教師,のちに新聞の編集者となる。1892年以後は妻が相続した遺産のおかげで詩作に専念。処女作《プロメートイスとエピメートイス》(1881)はしばしばニーチェの《ツァラトゥストラ》と比較される。神話叙事詩《オリンピアの春》(1900-06)によって1919年ノーベル文学賞を受賞。1914年にはスイスが中立を守り,平和のために貢献せよと訴える演説をした。晩年にはロマン・ロランと親交があった。
執筆者:増田 義男
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スイスの詩人。早くから無神論的な傾向をみせていたが、神学を学んで牧師を務めたのち、ロシアに行き、8年間教師としての生活を送る。帰国後新聞編集に携わるが、1893年以降はルツェルンで創作に専念した。このノーベル賞詩人の活動は多方面にわたっているが、本領は叙事詩にある。ショーペンハウアーとニーチェの影響を受け、芸術家と市民の対立を意識した詩人は、美を求めるエリートとしての英雄的な人物を古典的な叙事詩に表現しようとした。『プロメテウスとエピメテウス』(1881)は、あえて世界を支配する権力を拒否しても「魂」を守ろうとする高貴なプロメテウスを歌う作である。『オリンピアの春』(1900~05)は、過酷な運命を克服するギリシアの神々を描きつつ、ペシミスティックな宇宙像と幸福の雄々しい断念を語っている。1919年ノーベル文学賞受賞。
[岩村行雄]
『高橋健二訳『イマーゴー』(『ノーベル賞文学全集3』所収・1977・主婦の友社)』
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