スカート(読み)すかーと(英語表記)skirt

翻訳|skirt

精選版 日本国語大辞典 「スカート」の意味・読み・例文・類語

スカート

〘名〙 (skirt) 主に婦人服で腰から下に垂らして下半身をおおう筒状の衣服。時代によって様式が変遷し、すそ丈、種類など流行によって変化することが多い。タイトスカートフレアスカートプリーツスカートなど。
※都会(1908)〈生田葵山〉不安「裳袴(スカート)の裾長く靴の踵(かがと)を没するのを小気味よく蹴って歩む伊達な態(さま)に」

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デジタル大辞泉 「スカート」の意味・読み・例文・類語

スカート(skirt)

腰から下を覆う、主に婦人用の筒状の衣服。「スカートをはく」「ミニスカート
保護または装飾用に、物の下部につける覆い。家具のすそ部の補強材や、電車の前部につける金属板など。
[類語]キュロット

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スカート」の意味・わかりやすい解説

スカート
すかーと
skirt

女性の下半身衣のこと。広義には、ウエストから垂れ下がる衣服の部分に対しても用いられる。

[辻ますみ]

歴史

婦人服の下半身衣を独立させて、スカートとよぶようになったのは19世紀以後のことであり、それ以前はローブの一部分とみなされ、ペティコートとよばれていた。下半身の形の変化に関心が寄せられ、流行のポイントがそこに置かれた19世紀は、多様なデザインが次々に試みられ、男子服が現代服の形を整え始め、装飾性を失っていくのと対照的であった。19世紀初期のエンパイアスタイルのほっそりしたスカートは、やがてベル型やアワーグラス型(砂時計型)に膨らみ、中期にはそれが最大に達してクリノリンとなり、後方に広がるピラミッド型も出現する。その後はしだいに後ろ腰に膨らみを寄せるようになり、1870年代にバッスルスカートが現れ、世紀末のS字型シルエット、20世紀初めのホッブルスカート(よちよち歩きのスカート)へとめまぐるしく変化していった。

 第一次世界大戦が婦人服に与えた影響は大きく、とくに足をのぞかせたスカートの出現は衝撃的であった。これは1920年代にはショートスカートへと発展する。第二次世界大戦中のミリタリー調のタイトスカートは、戦後はディオールニュールックの影響で、丈の長いフレアスカートに一変する。その後ファッションの焦点は、スカート丈の変化に向けられていったが、その点から1960年代のミニスカートの出現は一つの頂点であった。その後はビッグルックの流行によるビッグなスカートや、さまざまな形や丈のパンツ類が登場し、現在の女性のボトムズ(下半身衣)は非常に多様化してきている。

 このような変化をみてくると、スカートは、基本として、自然に体に沿う筒型と、人工的に膨らみをもたせるベル型の2種に分類できる。筒型では古代や中世の衣装の下半身がそうであり、19世紀のエンパイアスタイルや20世紀のホッブルスカートやバレル型(樽(たる)型)、さらにタイトやセミタイトスカートの類がこれに属する。ベル型は膨らみを出すための支えや下着にくふうが必要であり、膨らませる方向や分量によって、さまざまな形態と名称をもってきた。16世紀のファージンゲールや、18世紀のパニエ、19世紀のクリノリンや後ろ腰のみを膨らませたバッスルなどはこの型に属し、いずれも腰枠でスカートを支えていた。20世紀にはドーム型やパラシュートまたはパラソルスカート(三角形の布を縫い合わせたスカート)があるが、これらは裁断方法のくふうと下着によって形が整えられている。体からどの方向にどの程度離すかによって、下半身には多様なデザインが可能であり、事実19世紀より現代まで、スカートはめまぐるしい変移をみせながら、婦人服の重要な位置を占めてきている。

[辻ますみ]

種類


(1)体に沿わせた、ゆとり量の少ないスカート。体への密着の程度によりチューブラースカート(管状スカートの意)、ストレートスカート、スリムスカート、タイトスカートの名称があり、裾(すそ)が細くなるとホッブルスカート、裾で急に広がるとトランペットスカートになる。タイトスカートにも、タックやギャザーやプリーツを入れたり、切り替え線を入れることによって、いろいろなデザインが可能である。またタイトなスカートの上に別布を重ねたものをパネルスカートとよんでいる。

(2)ゆとりのあるスカート。ギャザースカート、フレアスカート、サーキュラースカート(円形に裁断されたスカート)、ゴアードスカート(三角形の布をはぎ合わせたスカート)、ドームスカート(ドームのように半球形に膨らむスカート)、バレルスカート(樽型で中間が膨らむ)、ティアードスカート(ギャザーを幾段にも切り替えたスカート)、ペザントスカート(農婦服をまねた素朴なギャザースカート)、プリーツスカート(ひだスカート)、などがあり、ギャザーやフレアが入って全体がゆったりしたスカートをフルスカートと総称している。

 プリーツスカートは、プリーツの形によって名称があり、基本型として、サイドプリーツ(一方向のひだづけ)、ボックスプリーツ(箱ひだ)、アコーディオンプリーツ(蛇腹形のひだ)があり、これらを変形させたプリーツには、サンバーストプリーツ(太陽光線のように、上部は細く下部で広がる放射状プリーツ)、ナイフプリーツ(ナイフのように裾広がりになった細かいプリーツ)、インバーティドプリーツ(ボックスプリーツの逆ひだ)などがある。さらに基本形を組み合わせた複雑なプリーツ加工や、スカートの上方や裾のプリーツを消すという加工法もある。

(3)特殊な形のスカート。ラップスカートまたはラップアラウンドスカート(巻きスカート)、ヒップボーンスカート(腰骨で支える形のスカート)、ディバイデッドスカート(ズボンのように股(また)のあるスカート。キュロットスカートともいう)、ハーレムスカート(ゆったりしたトルコズボン型のスカート)、ジャンパースカート(上半身がある)。

(4)民族服のスカート。キルト(スコットランドの男性のスカート)、フスタネラ(ギリシアの男性の民族服)、サヤ(フィリピン)、フラスカート(ハワイ)、サロン(インドネシア)。

(5)丈による名称。マキシmaxi(最大を意味するマキシマムの略語。くるぶし丈のスカート)、ミディmidi(中間を意味するmidの派生語。ふくらはぎ中ほどのスカート)、ミニmini(最小を意味するミニマムの略語。膝(ひざ)上20センチメートル内外の極端に丈の短いスカート)。

[辻ますみ]


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改訂新版 世界大百科事典 「スカート」の意味・わかりやすい解説

スカート
skirt

広義には衣服や物体の裾,縁などを指すが,一般には腰から下をおおう女性の衣服をいう。フランス語でジュープjupeという。下半身の保護,衣服の装飾として用いられ,用途,流行により形や長さが変化する。語源は古英語のシャツを意味するscyrteで,婦人用スカートの意味としては,低地ドイツ語の婦人用ガウンを表すschörtに由来する。

 独立したスカートの前身は,古代エジプト人などが用いた腰衣(ロインクロス)に見られ,ひとつづきの衣服の一部としては,古代ギリシア・ローマ人などのひもでとめたキトントゥニカの下半身部もスカートであった。古代では多くの民族が,男女ともにスカートを用いたが,寒帯地方や中央アジアの騎馬民族のなかには,男子はズボン,女子はスカートをはいた例も見られる。しかし,西欧では中世後期までは,足首丈の,フレアーのついたゆったりしたチュニックであるコットが男女ともに着用されていた。15世紀に武装の影響をうけて,男子服が胴衣とズボンとに分かれ,女子服も胴衣とスカートに分離し,スカートが独立した衣服になった。胴衣とスカートは,ピンやホックなどでつなげられていた。男子のズボンが一般化したのと並行して,女性のスカートも二部式衣服の出現により普及し,今日にいたっている。

 独立したスカートは,流行の変遷に従って,ししゅう,リボン,房飾などで装飾されたり,鯨のひげや馬毛をいれたペティコート,針金や木でつくられた枠,腰当てなどをスカートの下に用いて,釣鐘,車輪,球形などその時代のスタイルを形づくった。17世紀前半のスペイン風モードは,固くのりづけした麻布に鯨のひげを入れたペティコートで釣鐘形にした。このペティコートはファージンゲールと呼ばれた。続くロココ・スタイルのスカートは柳の木などでつくられた腰枠(パニエpanier)を入れて横に広く張り出し,あたかもカニが歩いているようであったという。フランス革命は,服装自体も自然の体形に回帰させ,古代ギリシア風の体に沿ってほっそりとした形を尊重したエンパイア・スタイルempire styleを生み出した。しかし,スカートの形は再びふくらみ,19世紀半ばには馬毛入りペティコートで支えられた半球形のクリノリン・スタイルが流行し,ナポレオン第二帝政時代の典型的なモードとなった。以来,スカートは,産業革命後の生活様式の変化,機能的服装への着目などにより,徐々にふくらみが減り,世紀末には,後腰を強調したバッスル・スタイルがあらわれる。日本に移入された最初の洋装はクリノリン・スタイルとバッスル・スタイルであった。

 20世紀初頭には,足首を隠し,やや裾をひくスカートが流行していたが,1910年代には,足首を極端に細くしたホブル・スカートが,オート・クチュールのデザイナー,P.ポアレによって発表された。ホブルhobbleとはたどたどしく歩くという意味であるが,それまでのファッションと比べ,スカート丈に大きな関心を寄せたのは画期的なことであった。その後,スカート丈や裾の形にデザインの目が向けられるようになり,裾の線も前後がアンバランスなスカートがあらわれる。10年代から,スカート丈が徐々に短くなり,男子服をとりいれたテーラード・スーツには足首丈のスカートが組み合わされた。

 第1次世界大戦は布の節約と衣服の合理性が求められ,働く女性の増加などの影響をうけて,スカート丈がふくらはぎの長さにまで短くなった。その後,G.シャネルに見られるように,オート・クチュールのデザイナーの作品は,ロング,ミディ(ふくらはぎぐらいの丈)の長さのものが少なくない。20年代に,ショートヘアの新しい女性たちは,軽快で単純な直線やフレアーの,またプリーツ入りのスカートを着用し,スポーツ用,とくに乗馬用としてキュロット・スカートも用いられるようになった。第2次世界大戦後,C.ディオールの発表したたっぷりとフレアーの入ったロングスカートが,ニュー・ルックと名付けられ,戦時モードに対する反動として一世を風靡(ふうび)した。一方,腰から膝下にかけてぴったりとしたタイト・スカートも,戦後女性の活動的なスタイルとして一般化した。50年代以降は,スカートはさらに多様になり,プリーツ・スカート,ジャンパー・スカート,ゴアード・スカート,サーキュラー・スカート,ティアード・スカート,ミニ・スカート,マキシ・スカートなど変化に富んできた。とくに60年代のミニ・スカートは,高度成長期の機能性中心の時代に合致し,国際的に流行した。今日では流行に従いながらも形,素材,長さとも多様になり,日常着から礼装にいたるまで広く用いられている。
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百科事典マイペディア 「スカート」の意味・わかりやすい解説

スカート

スカートは中世以後婦人服の下衣として発展し,裁断法の発達とともに大型になった。16世紀にはフープ(わく)を入れて広げる手法がとられ,18世紀には極度に張らせたロココスタイルが流行した。19世紀初期にはほっそりしたエンパイア・スタイルになり,中期には広がったクリノリン・スタイルになった。末期には余分な布地を後腰のところでまとめたバッスル・スタイルが流行し,日本でも最初の洋装としてこのスタイルがとり入れられた。20世紀になると自然な形となり,第1次大戦後からスカートの丈(たけ)が史上初めて短くなった。 1960年代から1970年代にミニ・スカートが大流行,その後,マキシ,ミディなど,スカート丈の変遷はあるものの現在では多様な展開を見せている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スカート」の意味・わかりやすい解説

スカート
skirt

広義には,衣服,物体の裾,端,へりなどの意であるが,一般には,男女のコートやドレスの,ウエストライン以下に垂れる部分名。より狭義には,女子服の下体部を一体化して包み,おおう部分をさす。語源はシャツを意味する古代ノルマン語のスキュルト skyrt。女子服のそれをさす今日的用法は 19世紀になって始り,それまではペティコートの用語が使われた。長さ,形状,装飾,裁断,用途などによって多様な名称がある。

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ダイビング用語集 「スカート」の解説

スカート

顔に密着させるゴムの部分のこと。材質は、シリコンゴム、ブラックシリコン、ネオプレーンなどの種類がある。

出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報

栄養・生化学辞典 「スカート」の解説

スカート

 ウシの横隔膜のことで,屠畜業者の用語.

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