日本大百科全書(ニッポニカ) 「コット」の意味・わかりやすい解説
コット
こっと
Jan Kott
(1914―2001)
ポーランド出身のアメリカの演劇学者。超現実主義やマルクス主義に接したのち、シェークスピア劇を実存主義的に解釈した『シェークスピア論集』(1961。のちに『シェークスピアはわれらの同時代人』と改題)によって世界的名声を得た。この本は旧来のロマンチックなシェークスピア上演に対する批判の理論的根拠となり、ピーター・ブルックなどの演出家に大きな影響を与えた。ほかの著作には、ギリシア悲劇をやはり現代的に解釈した『神々の肉の宴(うたげ)』(1973)、戦中から戦後にかけての波瀾(はらん)に富んだ人生の回想録『私の物語』(1990)などがある。
[喜志哲雄]
『蜂谷昭雄・喜志哲雄訳『シェイクスピアはわれらの同時代人』新装版(1992・白水社)』▽『関口時正訳『私の物語』(1994・みすず書房)』▽『坂倉千鶴訳『カディッシュ タデウシュ・カントルに捧ぐ』(2000・未知谷)』