翻訳|crinoline
ヨーロッパ,アメリカで1840年ころから70年ころまで流行した半円球形スカートのためのペティコート。語源は,毛を意味するラテン語crinisに由来し,馬の毛や鯨のひげを入れて固く織った木綿,麻などでつくられた。1850年代には,細い鋼鉄製の骨組みだけの鳥籠状ケージ・ペティコートもあらわれ,歩くとバネ仕掛けのように揺れた。クリノリンの下にはシュミーズや,下ばきとしてパンタロンを着け,胴はコルセットで締めつけていた。細い胴,大きく広がったスカート,なで肩が当時の女性美の典型であった。大きなクリノリンはしばしば風刺の対象となり,ドーミエやクルックシャンクなど多くの画家たちによってカリカチュア化された。クリノリンの全盛期はフランス第二帝政時代で,ナポレオン3世の皇后ウジェニーは,クリノリン・スタイルがよく似合ったといわれる。1870年代には半球形から楕円形,釣鐘形へと小さくなってゆき,後腰部にふくらみをもたせたバッスル・スタイルへと変化する。クリノリン・スタイルは,18世紀のロココ調モードを特徴づけたパニエの模倣といわれ,ネオ・ロココとも称された。装飾的要素の強い貴族調モードの最後の様式といえる。日本では,幕末にクリノリン・スタイルの外国人女性の姿が描かれ,1873年には長崎の遊女たちが着用している。
執筆者:池田 孝江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
19世紀の後半、西欧の婦人が用いた、スカートを広げるためのアンダースカート、または腰枠のこと。
語源はラテン語のクリニスcrinis(髪、尾)とリヌムlinum(亜麻(あま)、麻布)の合成語。イタリア語に入ってクリノリノcrinolino、フランス語でクリノリーヌ、英語でクリノリンと発音する。1830年前後にヨーロッパに登場し、50年ごろ大流行となった。初め馬毛だけ、のちに綿、麻、ウールと混紡されるようになった。56年に人工クリノリンartificial clinolineが開発された。これは籠(かご)形ペチコートともいわれ、鯨骨、針金、ぜんまいなどを使用したものであり、さまざまなシルエットのスカートを支えていた。
[菅生ふさ代]
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