スッポンモドキ(読み)すっぽんもどき(英語表記)pitted-shell turtle

改訂新版 世界大百科事典 「スッポンモドキ」の意味・わかりやすい解説

スッポンモドキ (擬鼈)
pitted-shell turtle
Carettochelys insculpta

別名ニューギニアスッポンスッポンヌマガメとの中間の形質をもつ爬虫綱スッポンモドキ科Carettochelyidaeの珍しいカメで,1属1種。ニューギニア南部のフライ川流域などとオーストラリア北部の淡水に分布し,汽水にもすむ。甲長約50cm。甲はスッポン類と同様に鱗板を欠くが,ヌマガメ類と同様に硬い箱形をしており,背面は屋根状に隆起している。鼻先は細長い管状で,あごは鋭いくちばし状。四肢ウミガメのようなひれ状で,外側3本の指が長く第1,2指に鋭いつめがある。完全な水生で,比較的浅い川底で生活するが遊泳力は優れている。ときどき水面に鼻上げして呼吸するが,口腔総排出腔などによる皮膚呼吸によって,水中から酸素を得る量も多い。餌は小魚エビなどの水生生物や植物質。卵生で,繁殖習性についてはよく知られていない。稀種(きしゆ)として保護下におかれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スッポンモドキ」の意味・わかりやすい解説

スッポンモドキ
すっぽんもどき
pitted-shell turtle
flyriver turtle
[学] Carettochelys insculpta

爬虫(はちゅう)綱カメ目スッポンモドキ科のカメ。スッポンとヌマガメとの中間の形質をもった原始的な種で、1属1種で科を形成する。別名ニューギニアスッポン。パプア・ニューギニア南部のフライ川流域とオーストラリア北部の淡水に分布し、一部は汽水域にもすむ。甲長約50センチメートル。甲の表面はスッポンと同じく甲板(こうばん)(鱗板(りんばん))を欠くが、ヌマガメ同様に堅い箱形で、背甲は屋根状に隆起している。腹甲中央部は蝶番(ちょうつがい)状に連結するが、頭を引っ込めたあと完全には蓋(ふた)ができない。鼻先は細長い管状。四肢はウミガメのようなオール状で遊泳力が優れる。完全な水生で、比較的浅い水底付近で生活する。餌(えさ)は魚、エビ、水草などである。

[松井孝爾]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スッポンモドキ」の意味・わかりやすい解説

スッポンモドキ
Carettochelys insculpta; pitted-shell turtle

カメ目スッポンモドキ科。1属1種で独立の1科を構成する特異なカメ。甲長 70cmに達する個体もあるが,普通は 50cmぐらい。普通のカメ類とスッポン類との中間的な特徴をもち,甲骨板が完全な箱を形成しているにもかかわらず,それをおおう角質の甲板はなく,柔らかい皮膚をかぶっている。吻端部は肉質で,その先端鼻孔が開く。四肢は鰭状に変形し,それぞれに爪が2本しかない。ニューギニア南部とオーストラリア北部に局在する。淡水性で,産卵のとき以外は陸上へ上がらない。

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