改訂新版 世界大百科事典 「スパニエル種」の意味・わかりやすい解説
スパニエル[種]
spaniel
鳥猟犬種で,原産地はイギリス,アメリカ,ドイツ,フランス,オランダなど。スパニエル種には,イングリッシュ・コッカーEnglish cocker,アメリカン・コッカーAmerican cockerをはじめ,スプリンガーspringer,ウォーターwater,クランバーclumberなど十数犬種があり,日本で通常スパニエルと呼んでいるのはイギリス,アメリカ両国原産のコッカー・スパニエル種である。イングリッシュ・コッカー・スパニエルはスパニエル族のうちでは最も古く,1300年代にスペインの猟犬を基礎としてイギリスで育種改良された小型種である。その他のスパニエル種も同じ基礎犬から出発しているが,イングリッシュ・コッカーが単独犬種として認められたのは1890年代である。小柄だが体軀(たいく)の割合に四肢は太くたくましく,とくに前肢はまっすぐな骨太で,灌木の茂みや水中での活動に適している。耳は付け根が低く,大きく垂れ下がり,美しい被毛が密生しているのが特徴で,被毛は長く絹糸状で滑らかである。毛色は黒一色,純白から暗赤色に至る種々の中間色まで多様であり,またパーティー・カラーと呼ばれる白地に黒,オレンジ,レモン,肝臓色などの斑紋のもの,およびブラック・タン(黒と茶褐色)がある。さらに糟毛(かすげ)と称される,これらの毛色に白毛が絣状に全身に散在するものもあるが,それは一様なほどよいとされている。性格は穏和で知能が高く,大きさ,美しさ,調教しやすさなどから家庭犬,ショー・ドッグとしても広く迎えられている。体高は約40~48cm,体重は約11~16kg。アメリカン・コッカー・スパニエルはイングリッシュ・コッカーをもとにアメリカの風土に適すように,被毛をより長く,美しく選抜交配を重ねた犬種である。体格はイングリッシュ・コッカーよりやや小さく,頭はドーム型で丸く,目は円く大きい。毛色はイングリッシュ・コッカーと同様であるが,より長く,美しさが強調され,本来の猟犬種よりはむしろペット化,ショー・ドッグ化が著しく進み,世界の最多飼育頭数犬の一つに入っている。両犬種はいずれも断尾される習慣になっており,被毛は美しくトリミングされる。
執筆者:一木 彦三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報