1962年に故ケネディ米大統領の妹ユニス・ケネディ・シュライバーさんが、知的障害のある子どものスポーツイベントを開いたのが始まり。68年に米国で第1回世界大会が開かれ、現在は夏季と冬季にそれぞれ4年おきに開催されている。順位を競うとともに、知的障害者が練習の成果を発表し、互いの交流を深めることで、社会参加に必要な能力を得る機会とすることに主眼を置く。東西冷戦期にもボイコットなどはなく、五輪以上の平和の祭典ともされている。日本では2005年に、アジア初となる冬季世界大会が長野市で開催された。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
知的障害のある人が日常的にスポーツを行ったり、競技会に参加したりする機会を提供している国際組織。略称SO。国際本部はアメリカのワシントンDCにある。日常的に世界のさまざまな地域でプログラムが展開されていることから、複数形でよばれている。
1962年、アメリカ大統領ケネディの妹ユーニス・ケネディ・シュライバーEunice Kennedy Shriver(1921―2009)は知的障害のある子供たちが、スポーツや身体活動においてどのような能力があるかを知るために、アメリカのメリーランド州にある自宅の庭でデイキャンプを実施した。これがスペシャルオリンピックスの起源である。その後も同様のキャンプを実施するなかで、知的障害のある子供たちがさまざまなスポーツやレクリエーションプログラムに参加し、そのことが身体面や精神面に好影響を及ぼしていることが明らかになった。ケネディ財団は、アメリカ国内やカナダなどで実施される知的障害のある子供のデイキャンプ、スポーツプログラムや講習会などに助成を行っている。
1968年7月、第1回スペシャルオリンピックス国際大会がアメリカのイリノイ州シカゴで行われた。アメリカの26州とカナダから、1000人以上のアスリート(選手のこと。スペシャルオリンピックスでの呼称)が集まり、陸上競技、フロアホッケー、水泳競技に参加した。同年12月には非営利組織「スペシャルオリンピックス」国際本部が設立された。1988年、同本部と国際オリンピック委員会(IOC)は、「オリンピック」の名称使用や相互の活動に関する議定書を交わした。
2015年時点で、世界大会はオリンピックのない年に夏季大会と冬季大会が2年ごとに交互に開催されている。夏季大会では、水泳競技、陸上競技、バドミントン、バスケットボール、ボッチャ(的玉にボールを投げるなどして、いかに近づけるかを競う)、ボウリング、馬術、サッカー、ゴルフ、体操競技、ソフトボール、卓球、テニス、バレーボール、ローラースケートなどが行われている。冬季大会ではアルペンスキー、クロスカントリースキー、スノーボード、スノーシューイング、ショートトラックスピードスケート、フィギュアスケート、フロアホッケーなどが実施されている。スノーシューイングは、雪の上でも歩けるようくふうされた靴(スノーシュー)をはいて雪上で競走するもの。日本が世界大会に初めて参加したのは1983年の第6回ルイジアナ大会であった。2005年(平成17)には長野県で第8回冬季国際大会が開催され、84の国と地域から2575人の選手役員が参加した。
国内では1980年(昭和55)に日本スペシャルオリンピック委員会が創設され、国際スペシャルオリンピックスへの選手派遣や国内大会を実施していたが、資金難等により1992年(平成4)に解散した。その後、1994年に細川佳代子(1942― )を会長としてスペシャルオリンピックス日本が新たに設立された。2001年に特定非営利活動法人となり、2012年4月には公益財団法人化された。全国各地で活動が展開され、約8500人のアスリートと1万3000人以上のボランティアが活動している(2018年時点)。全国大会のナショナルゲームは2年ごとに夏季大会と冬季大会が交互に開催されている。
スペシャルオリンピックスでは「知的障害のある人たちに年間を通じて、オリンピック競技種目に準じたさまざまなスポーツトレーニングと競技の場を提供し、参加したアスリートが健康を増進し、勇気をふるい、喜びを感じ、家族や他のアスリートそして地域の人々と、才能や技能そして友情を分かちあう機会を継続的に提供すること」を使命としている。したがって、各地域で日常的に実施されているプログラムがもっとも重要で、国内大会や世界大会はあくまでその成果発表の場と位置づけられている。高度なパフォーマンスを目ざして競いあうことを目的としたパラリンピックとはこの点が異なる。世界170以上の国・地域で、500万人以上のアスリートとそれを支える100万人以上のボランティアが活動している。
日常的なプログラムは通常、年間を通して週1回、2時間程度、8週間を一つの単位として世界各地で行われている。大会ではすべてのアスリートに勝利するチャンスを提供するため、年齢、性別、過去の記録や予選の記録によってアスリートを組分けするディビジョニングという方法をとっている。ディビジョニングによって、競技の公平性が保たれ、すべての知的障害者にスポーツトレーニングと競技の機会を提供するというスペシャルオリンピックスの精神が奨励されるほか、どのアスリートにも勝者になれるチャンスが与えられるという利点が生まれる。たとえば、競技会の予選で走った選手はその記録によって組分けされ、全員が決勝も走る。表彰では各組の成績優勝者を含めたすべてのアスリートが表彰される。
なお、スペシャルオリンピックスは知的障害のあるアスリートと、障害のないパートナーがいっしょに練習や競技を行うユニファイドスポーツとよばれる活動も行っている。これはアスリートやパートナーがスポーツをする機会を増やすこと、両者の意識面でのバリアフリー化を図ることが目的である。
[藤田紀昭 2021年10月20日]
『太宰由紀子編著『ゆっくりゆっくり笑顔になりたい――知的発達障害のある人にスポーツの場を提供するスペシャルオリンピックスという活動』(2003・スキージャーナル)』▽『遠藤雅子著『スペシャルオリンピックス』(集英社新書)』
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(藤田紀昭 日本福祉大学教授 / 2007年)
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