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スーフィズム al-taṣawwuf

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

スーフィズム
al-taṣawwuf

イスラムの神秘主義。この派の初期の行者 (スーフィー) がスーフ (羊毛) の粗衣をまとっていたのでこの名があるとされている。8世紀末にイラクで初めてこの名が使われ,11世紀にすべてのイスラム神秘主義者に対し用いられた。イスラムは実際的な宗教として発展したが,初期には禁欲主義的で現世よりも来世に幸福を求める面が強かった。この傾向を受継いだのがスーフィズムで,修行や思索の助けをかりつつ神を愛することによって神と一体になる無我の恍惚境を目的とするにいたった。この神観念の変化は,指導層がウラマー (学識者) から9世紀以後に民衆の宗教者に移ったことに対応する。 13世紀以降は,修行者が一種の僧院生活を行うようになった。スーフィズムにはギリシア思想やユダヤ教,キリスト教,インドの神秘主義などが影響を与えている。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

スーフィズム

イスラム教の中でも内面を重視する思想運動。断食や礼拝といった五つの実践行為を義務とする主流派に対し、聖句を唱え、舞踊することで神との合一を目指す神秘主義的側面を持つ。 主流派は絶対的存在である神の超越性を重視し、宗教指導者の教えを介して信教を行う。信者が神との一体化を図ることはない。 そのため、スーフィズムは異端とされることが多い。中東のほか、アフリカ、中央アジア、インドなど各地に教団がある。

(2017-11-27 朝日新聞 朝刊 1外報)

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大辞林 第三版の解説

スーフィズム【Sufism】

〔初期の苦行者が羊毛(スーフ)の粗衣を着ていたことに由来するという〕
イスラム教神秘主義。コーラン読誦どくじゆやジクル(称名)儀礼などの修行実践を通して、神への接近を求める。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

スーフィズム
すーふぃずむ
fism

イスラム神秘主義のこと。この語は「神秘家」を意味するスーフィーfにイズム-ismが付加されてできた語で、アラビア語では「タサッウフ」taawwufという。この語もfから派生したものである。このfの語源については諸説があるが、羊毛を意味するスーフfに由来するとするのが通説である。スーフィーとは元来、迫りくる終末と地獄の業火(ごうか)におびえ、世間の虚飾を離れ、贖罪(しょくざい)と懺悔(ざんげ)のしるしとして羊毛の粗衣を身にまとい、禁欲と苦行のなかに生きようとする禁欲家をさしていた。このことは、スーフィズムと禁欲主義の密接な関係を示すが、両者は異なる。スーフィーは、恐怖よりも神への全き無私の愛を説く。このような愛は、自我意識の完全な消滅(ファナー)による神との二元的対立を超えた神秘的合一体験によって初めて可能となる。神以外のすべてを否定してそのような境地に到達するための修行が神秘階梯(かいてい)(マカーマート)であり、禁欲や清貧は改悛(かいしゅん)、聖法の順守などとともにこのなかに位置づけられる。
 スーフィーは預言者ムハンマド(マホメット)の啓示体験のなかに神との「合一」の原型をみるが、歴史的にはスーフィズムは8世紀後半以降の現象である。その発生にはさまざまな外的影響が考えられるが、内在的要因としては神学的思弁による神の超越性の強調と聖法の形式主義化などがある。スーフィズムの歴史は三期に分かれる。第一期は、神との「合一」を目ざす実践を強調し、体験や境地を詩や短句や行動によって大胆に表現し、またスーフィーの言動がときにウラマー(聖法学者)との対立を招いた時代。ラービア(714―801)、ビスターミー(?―874)、ジュナイド(?―910)、ハッラージュ(858―922)などがこの期の代表。第二期は、修行の方法を整理し、またスーフィズムが聖法に反するものでないとしてそれを弁護する理論家の出た時代。ムハーシビー(781―861)、サッラージュ(?―988)、マッキー(?―998)、クシャイリー(986?―1072)、ガザーリー(1058―1111)などがその代表。第三期でスーフィズムは逍遙(しょうよう)学派の哲学と結合して思弁化し、体系的世界観として確立する。スフラワルディー(1155―91)、イブン・アラビー(1165―1240)がその代表。他方では、12世紀後半からスーフィズムは教団(タリーカ)として組織化され、聖者崇拝と相まって広く民衆の間に浸透していく。このような民衆化はスーフィズムの呪術(じゅじゅつ)化を招き、自我の否定と内面への沈潜は自主性と外界への関心を失わせ、スーフィズムはイスラム世界の沈滞を正当化するイデオロギーとなり、近代に至って批判を受けるようになる。[中村廣治郎]

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世界大百科事典内のスーフィズムの言及

【イスラム神秘主義】より

…欧米では一般にスーフィズムsufismの名で呼ばれているが,この語はスーフィーṣūfīにイズムismを付してつくられたものである。アラビア語で神秘主義を表すタサッウフtaṣawwufもṣūfīを語根としてつくられた第5型動詞の名詞形で,元来は〈スーフィーとして生きること〉を意味した。…

【神秘主義】より

…密教に反して,仏陀の立場や禅の身心脱落・脱落身心を神秘主義とすることには問題がある。密教(3)イスラム 厳格な唯一神教であるイスラムの地盤からも,スーフィズム(スーフィーṣūfīはイスラムの神秘家をあらわす言葉)といわれる神秘主義の流れが生じた。これは新プラトン主義哲学やキリスト教からのみならず,ヒンドゥー教や仏教からも影響を受けて成立したといわれる。…

【新プラトン主義】より

…5世紀にはプロクロスがこの伝統を継承し,プラトン解釈史に画期的業績を残した。ユスティニアヌス帝の勅令によるアカデメイアの閉鎖(529)など6世紀の異教弾圧で,西方世界にはこの伝統は表だってはとぎれてしまうが,アウグスティヌス,ボエティウス,偽ディオニュシウス・アレオパギタなどの著作を通してキリスト教の教義形成に無視できない影響を与えたほか,東方キリスト教会にはフィロカリアという形で受け継がれ,さらにイスラム世界に入って,スーフィズムの哲学的原理として発展した。古代ギリシアの学術の継承とあいまって数学,天文学など自然諸科学の発展に対する寄与も小さくない。…

【ヘルメス思想】より


[伝統]
 ヨーロッパでは11世紀にプセロスが《コルプス・ヘルメティクム》に言及しているので,ひそかに伝えられていたことがわかるが,イスラム圏では,ヘルメス・トリスメギストスを精神的父祖としていたシバ(サバ)人で,初期のアラビア科学者として有名なサービト・ブン・クッラがシリア語で《ヘルメスの教え》を書いてみずからアラビア語に訳した。同様にヘルメスを預言者の一人として扱っていたマニ教を受け継いだイスラム教シーア派はヘルメスをイドリース(旧約聖書のエノク)と同一視し,ズー・アンヌーンによってイスラム神秘主義(スーフィズム)にも影響を与えた。イスラム圏でヘルメス思想の影響を受けた著名な科学者や思想家としてはキンディー,ジャービル・ブン・ハイヤーン,イブン・アルハイサム,スフラワルディーらがいる。…

※「スーフィズム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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