アメリカのリンデン・ラボ社が開発したコンピュータシステム。技術的にはクライアントのアプリケーションソフトウェアとサーバーによって構成されている。セカンドライフは3次元のグラフィックスでメタバースとよばれる仮想的な生活空間を表現し、世界中のユーザーがそのなかでさまざまな活動を行うことができるようになっている。
セカンドライフのなかでは個々の利用者はアバターとよばれる仮想的な見た目をもつ。アバターは利用者が自由にデザインすることができ、それぞれの利用者の個性を現している。そして、アバターをセカンドライフ内で自由に移動させ、ほかの利用者とチャット(おしゃべり)をしたり、建物を建てたり、イベントに参加したりと、現実世界と類似の活動を行って楽しむものである。
セカンドライフの世界のなかでは誰でも料金を払うことでSIM(シム、日本語では「島」ともいう)とよばれる土地を所有できる。この土地の上にさまざまな建物を建てたり、イベントを行ったりすることができる。土地を所有しなくても土地を所有している人から一部の区画を借りることもできる。
セカンドライフ内ではリンデン・ドル(L$)という単位の仮想的な通貨が使われる。セカンドライフ内で土地の売買を行ったり、仮想的な(CGとプログラムでできている)車などのオブジェクトを買ったり、アバターがダンスをしたり(ダンスのプログラムを提供したり)、さまざまな活動、つまり経済活動に対して、リンデン・ドルによる支払いが行われている。
この通貨はアメリカ・ドルとの交換ができることから、セカンドライフ内での多様なビジネスを起こすことで、現実世界でのビジネスとリンクさせることも可能である。
このような仮想的な世界が構築され、ユーザーが増大し、そこで経済活動が行われることは、その規模が大きくなると、現実世界の経済にも少なからず影響を与えると考えられている。
たとえば、なんらかの事情から現実世界では経済活動に参加することが困難な人であってもセカンドライフ内ではさまざまな経済活動が可能であることや、現実世界では出会えない人同士が協働して、プロジェクトを遂行したりすることである。
一方で、セカンドライフ内では他人がつくった建物を破壊するような一種の仮想的なテロ行為が行われたりする例も出てきている。今後は現実世界と同じような犯罪が起こることも予想され、セカンドライフ内での自治をどのように行うかかなども議論となるだろう。
さらに、セカンドライフ以外のメタバースが登場しており、今後、異なったメタバース間を単一のアバターが行き来できるようになる技術の開発なども始まっている。
このように、セカンドライフは単なるネットワークゲームのようなアプリケーション以上にデジタル時代に大きな意味があると考えられており、従来からあるウェブ(WWW)に代表されるようなデジタル社会が高度に発展したことによって形づくられた一つのデジタル社会のあり方ということもできるだろう。
[中島由弘]
『浅枝大志著『ウェブ仮想社会「セカンドライフ」――ネットビジネスの新大陸』(2007・アスキー)』▽『マイケル・リマズイスキー、ワグナー・ジェイムス・アウ、マーク・ウォレス他、中川蘭丸訳『セカンドライフ公式ガイド』(2007・インプレスR&D、インプレスコミュニケーションズ発売)』▽『鴨沢浅葱著『セカンドライフ創世記 3Dインターネット・ビジネスの衝撃』(2007・インプレスジャパン)』
(稲増龍夫 法政大学教授 / 2008年)
(斎藤幾郎 ライター / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「パソコンで困ったときに開く本」パソコンで困ったときに開く本について 情報
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