改訂新版 世界大百科事典 「セラピオン兄弟」の意味・わかりやすい解説
セラピオン兄弟 (セラピオンきょうだい)
Serapionovy brat'ya
1921年初めにソビエトのペトログラード(現,サンクト・ペテルブルグ)で結成された文学団体。《世界文学》出版所に拠ったシクロフスキー,ザミャーチンのゼミナールが母体となった。E.T.A.ホフマンの同名の小説中の隠者が命名の由来で,V.V.イワーノフ,ゾーシチェンコ,カベーリン,フェージン,チーホノフらが主要メンバーであり,夭折したルンツLev Luntsが理論的指導者と目された。統一綱領をもたぬ,ゆるやかな組織だったが,共通して,傾向的な政治主義の否定が掲げられ,ロシア革命と国内戦の時代の〈新しい素材に見合う新しい技法の開拓〉が目標とされた。22年に《文学雑記Literaturnye zapiski》誌に発表されたメンバーの自伝と,同年刊行された実験的な文集《セラピオン兄弟》がグループの仕事として残っている。才能ある作家を集め,メンバー個々の創作活動も盛んだったので,プロレタリア文学系団体の声高なイデオロギー批評が支配した20年代に,非政治主義的,芸術的な同伴者作家グループとして大きな影響力をもった。
執筆者:江川 卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報