ゼロの焦点(読み)ゼロのしょうてん

改訂新版 世界大百科事典 「ゼロの焦点」の意味・わかりやすい解説

ゼロの焦点 (ゼロのしょうてん)

松本清張の長編推理小説。1958年から60年にかけて《宝石》に連載。新婚まもない夫の失踪という不可解な発端から,謎を追う妻の前に夫の隠された顔がつぎつぎに現れ,やがて意外な真犯人にたどりつくまで,プロットの展開は周到な伏線を張りめぐらしながら,心理と行動の必然を追って首尾をととのえている。異常性のことさらな強調を避けた手法が事件の日常的なリアリティを確かなものにし,また,金沢を主要な舞台として,能登半島の冬の海の描写が運命の落し穴におちた人間の悲劇を彷彿(ほうふつ)させるみごとな効果を添えている。作者の初期推理小説の代表作というだけでなく,戦後推理小説史上の傑作といえる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「ゼロの焦点」の解説

ゼロの焦点

①松本清張の長編推理小説。1959年刊行。戦争直後の混乱が生んだ悲劇を描く、著者の代表作のひとつ。
②1961年公開の日本映画。①を原作とする。監督:野村芳太郎、出演:久我美子高千穂ひづる有馬稲子、南原宏治、西村晃ほか。第12回ブルーリボン賞助演女優賞(高千穂ひづる)受賞
③2009年公開の日本映画。①を原作とする。監督:犬童一心、出演:広末涼子中谷美紀、木村多江、杉本哲太、崎本大海ほか。

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