タテジマイソギンチャク(読み)たてじまいそぎんちゃく(その他表記)orange-striped anemone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タテジマイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説

タテジマイソギンチャク
たてじまいそぎんちゃく / 縦縞磯巾着
orange-striped anemone
[学] Haliplanella lineata

刺胞(しほう)動物門花虫(はなむし)綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目タテジマイソギンチャク科に属する海産動物。北半球の温帯域に分布する。体壁が伸びると高さ・径とも1~3センチメートル、縮むと半球状になる小形種で、体壁は滑らかで多くの槍孔(やりあな)をもち、外的刺激を受けるとそこから白い槍糸(やりいと)を出す。体壁上端は襟状に折れ、触手へと続く。触手は淡黄土色ないしオリーブ色で短く、96~192本である。口盤は暗いオリーブ色と黄橙(おうとう)色で、暗橙色の放射線がある。口唇は暗橙色か赤褐色。体壁の地色は暗いオリーブ色で、そこに縦縞模様がある。模様には四つの型がある。橙(だいだい)色の12本の条線のあるものがもっとも多く、その他に24本の黄色細条線のあるもの、その二つの模様をあわせ備えるもの、条線をまったく欠くものの4型である。隔膜は6+6+12+24の48対で、下端に槍糸をもつ。槍糸中に3種類の刺胞をもつ。日本各地の潮間帯に普通にみられ、かなり淡水の影響を受ける所にもみられる。

 日本には4型あるが、アメリカヨーロッパなどではこれほど多様な型はみられず、この種は日本が原産で、船舶によって世界各地に伝播(でんぱ)されたと考えられている。このことにより、属名は「海の放浪者」の意味ギリシア語が与えられている。

[内田紘臣]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タテジマイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説

タテジマイソギンチャク
Diadumene lineata

刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目タテジマイソギンチャク科。体高 2~3cm,口盤の直径 1.5~2cm。体壁は暗緑色の地に橙黄色の 12本の,または淡黄色の 24本の縦縞をもつが,なかには両方あわせもつものや,縞をもたないものもある。体表は平滑であるが,多数の槍孔があり,刺激を受けるとここから槍糸を出す。槍糸には刺胞が並んでいる。足盤が切れるようにして 2分裂する特徴がある。通常の触手のほかに太いキャッチ触手をもち,系統の異なる個体とはこの触手を伸ばして戦う。日本各地の海岸に広く分布し,干潮線上の岩石や貝殻に付着している。ヨーロッパやアメリカ合衆国にも広く分布しているが,日本からの船に付着して運ばれたものと考えられている。(→イソギンチャク類刺胞動物花虫類無脊椎動物

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改訂新版 世界大百科事典 「タテジマイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説

タテジマイソギンチャク
Haliplanella luciae(=H.lineata

花虫綱タテジマイソギンチャク科の腔腸動物(刺胞動物)。日本各地の海岸に分布し,干潮線上の岩石や貝殻に付着するほか,桟橋の棒杭などにも付着する。体高2~3cm,口盤の直径1.5~2cmの円筒状。体壁は個体によって変異が見られるが,暗緑色の地に橙色の12本の縦線,または淡黄色の24本の縦線をもつもの,なかには橙色と淡黄色の両方の縦線をもつものなどがあるが,これらの縦線をまったくもたないものもある。触手は灰褐色ないし褐色であるが,水中でも触手が大きく広がることはない。汽水や高い温度に対して強い抵抗力がある。
イソギンチャク
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のタテジマイソギンチャクの言及

【イソギンチャク(磯巾着)】より


[形態]
 体は円筒状で上端は口盤になり,下端は足盤でこれで岩など他の物に着生する。体色には,赤色,紫色,緑色や斑紋が入ったものなどがあり,タテジマイソギンチャク(イラスト)やコモチイソギンチャク(イラスト)などは,色彩が個体によって変化している。触手は先端がとがっているのがふつうであるが,イワホリイソギンチャクのように球状になっているもの,枝分れしているものもある。…

※「タテジマイソギンチャク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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