化学辞典 第2版 「タングステンブロンズ」の解説
タングステンブロンズ
タングステンブロンズ
tungsten bronze
タングステン青銅ともいう.非化学量論的なMxWO3(0 < x ≦ 1)なる組成をもつタングステンの化合物で,青銅に似た外観をもつ.M = Naのものがもっともよく知られている.タングステン酸のナトリウム塩,カリウム塩,アルカリ土類金属塩を水蒸気流中で加熱するか,溶融したタングステン酸塩を電解還元するか,またはタングステン酸ナトリウムを金属ナトリウム,タングステンあるいは亜鉛で還元することにより得られる.x~0.7の黄金色からx~0.3の青紫色まで組成により異なった色を呈し,金属光沢をもち,良導体であるなど金属類似の性質を示す.化学的にはきわめて安定である.水に不溶,フッ化水素酸以外の酸に難溶.アルカリの存在下で酸素により酸化されてタングステン(Ⅵ)酸を生じる.NaxWO3はペロブスカイト型構造をとるが,理想的な組成NaWO3と比較してNaがさまざまな割合で欠けた不完全結晶格子をもつ欠陥構造をとり,Na+ が1個欠けるごとに五価のタングステンが六価になる.LixWO3は表示材料としての用途がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報