日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダコタ」の意味・わかりやすい解説
ダコタ(民族)
だこた
Dakota
アメリカ合衆国、グレート・プレーンズに居住する北米平原先住民集団(アメリカ・インディアン)。スー(シュー)Siouxともいう。「スー」はアルゴンキン系集団からの呼び名で、自らは「ダコタ」と称する。言語はスー語族のスー語。東部の森林地帯から西部のミズーリ川流域まで広がり、七つのグループに分かれていた。平原諸先住民中最強の勢力を誇り、白人の侵入に対してもっとも激しく抵抗したことで有名である。とくに1876年シッティング・ブルSitting Bull(1834―90)らに率いられて、カスター将軍指揮下の第七騎兵隊を全滅させたリトル・ビッグ・ホーンの戦いは名高い。また1890年ウンデッド・ニーにおいて虐殺され、先住民の反抗の最後を印したのもダコタであった。
生活は他の平原先住民と基本的に変わらない。採集狩猟と簡単な農耕を組み合わせていた経済生活が、馬の導入と同時にバッファロー狩りに全面的に依存するようになった。ティピとよばれる円錐(えんすい)形のテントに住み、バンド(数家族からなる政治・経済上の共同集団)に分かれて暮らしていたが、各バンドは独立しており、リーダーは予知力や武勇といった個人的能力に従って選ばれた。また、太陽踊りという苦痛に満ちた宗教儀礼が重要である。現在でもダコタは人数も多く(合衆国内に約9万人)、先住民復権運動に重要な役割を果たしている。
[木村秀雄]
ダコタ(アメリカの地名)
だこた
Dakota Territory
アメリカ合衆国中部にあった旧準州。現在のサウス・ダコタ、ノース・ダコタ両州全域、およびモンタナ、ワイオミング両州の東部域を含めて1861年に結成され、68年には両ダコタ州域のみに領域が減少した。州都はヤンクトン(1861~83)、ビスマーク(1883~89)。89年にノース・ダコタ、サウス・ダコタに分割され、それぞれ州に昇格した。1874年にブラック・ヒルズ山中に金鉱が発見されて以降の発展は目覚ましく、人口の急増を促した。しかし、もともとダコタ人など先住民(アメリカ・インディアン)の居住地であったところから、白人との間に激しい抗争が絶えることがなかった。
[作野和世]