ティアワナコ文化(読み)ティアワナコぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「ティアワナコ文化」の意味・わかりやすい解説

ティアワナコ文化 (ティアワナコぶんか)

ボリビアの標高4000mを超えるアンデス南部高原,チチカカ湖に近い荒涼とした草原にあるティアワナコTiahuanacoを中心とする文化。中・北部アンデスのチャビン文化よりは新しく始まり,典型的なティアワナコ文化期を経て,ペルーワリ文化とともに周辺地域に拡張して第2の文化的ひろがりを実現したティアワナコイデTiahuanacoide期にいたる100-1200年の文化であることが知られている。中心となるティアワナコは大宗教建造物群からなり,その壮麗さと,巧みな石造技術については,スペイン人記録者や多くの旅行者により早くから西欧諸国にも紹介されていた。全盛期はペルー海岸のモチカ文化ナスカ文化と同時代で,遺構彫像遺物にみるネコ科動物,コンドル,蛇のモティーフは独自の表現様式をとるものの,本質的にはチャビン宗教の流れを汲むものに違いない。カラササヤKalasasayaと呼ばれる180m×135mの主要基壇には約4m×3mの一枚石でつくられた有名な〈太陽の門〉が残されている。それにみる主神ビラコチャの浮彫文様は華麗だが力強さに欠けている。付近から,両手で胸に儀仗儀器をささげ持つ独特なスタイルをした高さ3mの柱状石像が発見され,今は主神像として基壇の中央に復原建立されている。またカラササヤに付随する一辺約30mの方形の半地下式遺構が修復されている。中央に人像石柱が置かれ,壁面には丸彫の人頭像がはめこまれている。土器はケーロkeroとよばれる朝顔状に口の開いたコップ形で,赤地に,黒・茶・白・灰色の,様式化されたネコ科動物などの文様を描く。その他の遺物には骨製品や金属製の小神像がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティアワナコ文化」の意味・わかりやすい解説

ティアワナコ文化
てぃあわなこぶんか
Tiahuanaco

西暦紀元直前から12世紀末まで、ボリビア高原ティティカカ湖南東岸のティアワナコに栄えた古代文化。アンデス文明の形成期後期にあたる時代から始まって五つの相に分けられるが、その第3、第4相が古典期に対応する。ティアワナコは、カラササーヤという180メートル×135メートルの基壇およびそれに付属した30メートル平方の半地下式神殿を中心に、石造建造物や土のピラミッド、多くのモノリットなどを配して構成された大祭祀(さいし)センターであった。最近では、周囲に住居址(し)があることも指摘されている。ティアワナコ文化の影響は、ボリビア高原一帯およびチリ北部のアタカマ地方にまで及んだ。

 土器は、口の開いたコップ形の彩色容器や、ピューマやコンドルの頭をつけた香炉が代表的である。土器に現れたピューマ、コンドルの文様や、一枚石でつくられた太陽の門に刻まれた神像は、7世紀からペルー中部に広まり、コンチョパタ、ロブレス・モコなどの各様式を生んだが、その後まもなくしてワリを中心に類ティアワナコ的な性格の都市文明が興り、それがペルー全土に拡大するに至った。

[増田義郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ティアワナコ文化」の意味・わかりやすい解説

ティアワナコ文化【ティアワナコぶんか】

アンデス文明古典期から後古典期にまたがる文化。紀元100年ころにボリビア高原チチカカ湖南岸のティアワナコTiahuanacoに興り,のちにワリ文化とともにアンデス全域に急速に伝播したが,その広域化と同時に次第に衰退,1200年ごろに消失した。全盛期はペルー海岸地方のモチカ文化ナスカ文化と同時期とみられる。チャビン文化の流れをくみ,石像や土器,銅器に特色があり,神殿などの巨大な石造建築物が多く造られた。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ティアワナコ文化」の意味・わかりやすい解説

ティアワナコ文化
ティアワナコぶんか
Tiahuanaco culture

アンデス文明の古典期文化 (前 200頃~後 1000頃) 。ボリビア高原のチチカカ湖南岸を拠点に発達した神殿文化で,巨大な石造建築物と石彫に特色がある。首都ティアワナコの遺跡には,創造神ビラコチャの像を刻んだ「太陽の門」や「カラササヤの神殿」,首長や神官の巨大な丸彫の石彫像が保存されている。 2000年世界遺産の文化遺産に登録。 700年頃には文化の派生,移動が始まり,広くアンデス全域に伝播するが,ペルー南高地のワリ,中部海岸のパチャカマの都市はその副次的中心地であった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「ティアワナコ文化」の解説

ティアワナコ文化
ティアワナコぶんか
Tiahuanaco

1〜12世紀,南米ボリビアの高原地帯に栄えた文明
全盛期は,ペルーのナスカ文化やモチカ文化と同時期で,巨石による宗教建造物を多数残している。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のティアワナコ文化の言及

【ラテン・アメリカ美術】より

…染織ではチャンカイ文化とナスカ文化が技術と表現の点ですぐれた作品を多く残している。石彫はチャビン文化のもとで最も精緻で均斉のとれた構成の美を達成したが,その後の発展はティアワナコ文化を除くとほとんどない。インカ建築の壁の巨石の配置に美的構成をみることもできよう。…

※「ティアワナコ文化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android