デジタルオーディオディスク(読み)でじたるおーでぃおでぃすく(英語表記)digital audio disc

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

デジタルオーディオディスク
でじたるおーでぃおでぃすく
digital audio disc

オーディオ信号をデジタル符号に変えて記録する円盤ディスク)状媒体。DADともいう。おもなものはコンパクトディスク(CD)とミニディスク(MD)である。

[吉川昭吉郎]

コンパクトディスク

コンパクトディスク(CD)は、直径12センチメートルの光学ディスクを用いたデジタルオーディオディスクである。1980年(昭和55)ごろソニーオランダフィリップス共同で提案・開発し、1982年に商品化された。ポリカーボネートを材料とする円盤表面に、オーディオ信号をデジタル化した符号列を、ピットとよばれる微細なくぼみの連続パターンにして形成し、その上に反射面となるアルミニウム薄膜を蒸着し、さらに保護膜をかぶせてレーベル(タイトル、音楽家、レコード会社など)の印刷を行ったものである。ピットは円盤の中心から外周に向かって渦巻き状に連続している。再生は、円盤のポリカーボネート側に赤色レーザー光を照射し、ピットのあるなしで反射状態が違うことを利用してピットがもつデジタル情報を読み取る。このデジタル情報をオーディオ信号に再変換して音楽情報として出力する。

 CDの演奏時間は74~80分、デジタルデータは標本化周波数44.1キロヘルツ、量子化ビット数16ビット、信号は非圧縮で、コピー制限はない。オーディオ信号のデジタル化には、EFM(Eight to Fourteen Modulation)とよばれる信号処理、CIRC(Cross Interleaved Reed-Solomon Code)とよばれる誤り訂正方式を採用して、CDに最適な条件を得ている。

 CDは非接触再生のためLPレコードのように摩耗劣化の心配がなく、ワウ(回転むらによる音のひずみ)やフラッター(再生むら)がない安定した高音質が得られるほか、ランダムアクセスが容易であるなどの長所があるため、音楽媒体として広く普及した。

 1999年(平成11)ごろになると、CDの特長を生かしながらより優れた音質を得る高規格のディスクが提案された。ソニーからSACD(スーパーオーディオCD:Super Audio compact disk)が、また日本ビクター(現、JVCケンウッド)からDVDオーディオ(DVD Audio)がそれぞれ開発・商品化された。高級指向のユーザーから歓迎されたが、市場ではCDを置き換えるほどの成長はなく、現在もCDは音楽媒体として主流の位置にある。

 当初は音楽用に開発されたCDであるが、用途や種類が多様化し、大きなCDファミリーを形成するに至っている。CD-ROM(ロム)(Compact Disc Read Only Memory)はCDと同じ構造であるが、コンピュータやゲーム関連のデータを記録する用途に使われる。CD-R(Compact Disc Recordable)やCD-RW(Compact Disc Rewritable)などは書き込みや書き換えができるCDである。ただしCD-RやCD-RWはピットと金属反射膜のかわりに有機色素膜を使い、色素の状態がレーザー光照射によって変化する相転移という現象を利用して書き込みを行うものである。用途や原理が異なるこれらのものと区別する必要がある場合、音楽用CDをCD-DA(コンパクトディスクデジタルオーディオCompact Disc Digital Audio)とよぶこともある。

[吉川昭吉郎]

ミニディスク

ミニディスク(MD)は、1992年にソニーが提案・発売した小型のデジタルオーディオディスクである。コンパクトカセットにかわるものとして開発され、再生専用ディスク、録音用ディスクおよびハイブリッドディスクの3種の規格がつくられた。

 ディスクのサイズは直径6.4センチメートルで、小型のカートリッジに納められて、傷やごみから保護されるようになっている。

 再生専用ディスクはCDと同じ原理の光学ディスクに音楽を録音したものである。小型のため、情報は約5分の1に圧縮されて録音される。携帯に便利なメディアとして発売されたが、CDに対して格別の特長が認められず、使用されたのは短期間にとどまった。

 録音用ディスクは光磁気記録という方法で録音するもので、ブランク(未録音)ディスクにユーザーが録音したり編集したりすることができる。このタイプは便利さが認められ、MDの主流になった。2チャンネルステレオで録音時間60分、74分および80分の3種類のディスクがある。会議メモ用などにモノラル録音もでき、この場合は録音時間は2倍になる。

 MDシステムは据え置き型デッキ、ミニコンポ、携帯型(MDウォークマン)、カーオーディオなどさまざまな形態で一時期普及したが、半導体メモリー(ICメモリー)を使うデジタルオーディオレコーダーの出現によって急速に衰退する。

 ハイブリッドディスクは、再生専用ディスク、録音用ディスクの両方の機能を備えたディスクであるが、規格だけで実際につくられることはなかった。

 なお、CDの開発と同時期の1980年に、西ドイツのテレフンケン社とテルデック社が共同で、MDを提案した(提案のみ)。後に出たソニーのMDと同名であるが、これとは無関係のものである。

[吉川昭吉郎]


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