翻訳|flutter
飛行機の速度が速くなったとき,主翼や尾翼が空気の力で激しい振動を起こすようになる現象。飛行速度が遅いときには,翼に生じた小さなかく乱によって翼の弾性振動が発生しても,翼の振動に伴って起こる空気力によって減衰される。しかし高速になると,翼の振動に伴って起こる空気力が翼の振動を助長して激しい振動が生ずる。フラッターがひどくなると翼の空中分解を起こすので,飛行機の運用はこのフラッターを発生しない範囲の速度に制限される。主翼や尾翼の構造をがんじょうにし,翼の固有振動数を高くすれば高速までフラッターを生じなくなるが,必要以上にがんじょうに作れば,構造が重くなり,飛行機の性能は低下する。
執筆者:鳥養 鶴雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
飛行中の飛行機の翼に発生する振動。空気の流れのエネルギーを受けて生ずるため、いったん発生すると振幅は急速に増大し、翼構造が破壊したり、甚だしい場合は機体が空中分解することもある。原因は、翼構造の曲げとねじれの固有振動数で、飛行中の翼に加わる曲げとねじれを元の状態に戻そうとする働きが、特定の速度に達すると固有振動数と一致してしまい、発散振動を引き起こすためである。翼構造だけでなく、異なった固有振動数をもつ二つのもの、たとえば翼と補助翼、安定板と舵面(だめん)などが、共振して別の固有振動数で振動を始めることもある。フラッターを防ぐには、翼構造のねじれ中心より前に重心がくるように構造に配慮したり、マスバランス(操縦により動く翼面に取り付けた調整用の重量物)を取り付けて固有振動数を変える、舵面や操縦系統の剛性を高める、操舵機構の遊びをなくす、動力操縦機構を採用する、などの対策がある。現在、亜音速ではかなり正確にフラッターを推定できるが、遷音速ではまだ困難な点があるとされている。
[落合一夫]
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