トチバニンジン(読み)とちばにんじん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トチバニンジン」の意味・わかりやすい解説

トチバニンジン
とちばにんじん / 栃葉人参
[学] Panax japonicus C.A.Mey.

ウコギ科(APG分類:ウコギ科)の多年草。地下茎は太く、横にはって結節があり、細い根を出す。茎は直立し、高さ50~80センチメートル、毛はなく、基部は膜室の鱗片(りんぺん)で包まれる。葉は5~7小葉からなる掌状複葉長柄があり、茎の中ほどに輪生状につく。小葉は、質は薄く、倒披針(とうひしん)形で先は鋭くとがり、不ぞろいの鋸歯(きょし)がある。6~8月、茎頂から1本の長い花序軸を出し、その先に多数の淡黄緑色花を散形花序につける。果実球形、径約6ミリメートルで、赤く熟す。山地の樹陰に生え、北海道から九州に分布。中国にもみられる。名は、葉がトチノキに似ることによる。

[小林純子 2021年11月17日]

薬用

地下を横に長く伸びている根茎タケの稈(かん)に似ているため、漢方では竹節人参(ちくせつにんじん)と称して強壮、健胃、去痰(きょたん)剤としてチョウセンニンジン代用とするが、薬効はチョウセンニンジンよりも劣るといわれている。株によっては根茎の他端に球状の根がついている場合があり、これを珠(たま)人参(玉人参)と称するほか、長形の根を直根(ちょっこん)人参と称して同様に用いるが、産出量はきわめて少ない。

[長沢元夫 2021年11月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トチバニンジン」の意味・わかりやすい解説

トチバニンジン(栃葉人参)
トチバニンジン
Panax japonicus

ウコギ科の多年草。チクセツニンジンともいう。日本特産で各地の山地の木陰に生える。地下茎は太く横にはい,タケの節に似た結節をもつ。茎は地下茎の先端から1本出て直立し,茎頂に3~5枚の葉を輪生する。葉は3~7枚の小葉から成る掌状複葉で柄がある。夏に,茎の先端から長い花茎を出し,その先端に1~4個の散形花序を出す。各花序には5弁の小さな白色花が多数つく。果実は球形で赤く熟する。チョウセンニンジン (朝鮮人参)とは同属近縁種で,その代用品として薬用にされる。和名は葉がトチノキに似ていることにより,別名は根茎がタケの節のようであることによる。

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世界大百科事典(旧版)内のトチバニンジンの言及

【チョウセンニンジン(朝鮮人参)】より

…アメリカ東部産のアメリカニンジンP.quinquefolia L.(英名American ginseng)も薬用に利用され,チョウセンニンジンに劣らない薬効があるとされ,広東人参(洋参)と呼ばれる。また三七人参はP.notoginseng (Burk.) F.H.Chenの地下部で,主として止血,鎮痛,消炎,近年は強心,肝疾患などに,竹節人参はトチバニンジンP.japonicum C.A.Mey.の根茎で,去痰,解熱,健胃に用いられる。【新田 あや】
[歴史]
 朝鮮では高麗人参ともいう。…

※「トチバニンジン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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