トチノキ(読み)とちのき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トチノキ」の意味・わかりやすい解説

トチノキ
とちのき / 橡

[学] Aesculus turbinata Bl.

トチノキ科(APG分類:ムクロジ科)の落葉高木。高さ30メートル、径1メートル以上になる。冬芽は大形、頂芽は長さ約4センチメートル、長卵形で樹脂がある。葉は5~7枚の小葉からなる掌状複葉。小葉は倒長卵形で長さ9~30センチメートル、幅4~12センチメートル、基部はくさび状に細くなって葉柄につながる。明瞭(めいりょう)な側脈が18~22対ある。初夏、円錐(えんすい)花序をつくり、両性または雄性の花をつける。両性花は雄しべ7本、雌しべ1本。雄性花では、雌しべは退化している。萼(がく)は鐘状で不規則に5裂し、花弁は4枚で微紅白色、やや不同形で雄しべより著しく短い。蒴果(さくか)は倒卵円形、10月ころ熟して3裂し、中にクリの果実に似た光沢のある赤褐色の大きな種子がある。山間の沢地に生え、北海道南西部から九州に分布する。種子は食用に、材は家具、器具、彫刻材に用いる。トチノキ属は北半球の温帯に広く分布し、13種知られる。マロニエセイヨウトチノキ)が有名である。

[伊藤浩司 2020年9月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トチノキ」の意味・わかりやすい解説

トチノキ(栃の木)
トチノキ
Aesculus turbinata; Japanese horse chestnut

トチノキ科の落葉高木。日本各地の山地に生え,湿気が多くしかも水はけのよい場所を好む。庭木や街路樹としても栽植されている。樹高 30mに達し樹形が美しい。樹皮は灰褐色で若い枝には赤褐色の軟毛があるが,のちに無毛となる。葉は長い柄があって対生し,径 30~50cmもの大型の掌状複葉で5~7枚の小葉がある。下面の葉脈上と脈腋に赤褐色の軟毛がある。初夏に,長さ 30cmほどの上向きの円錐花序をなして多数の白色花をつける。花は単性花 (雄花) と両性花とがある。おしべ7本と花弁4枚があり,萼は鐘形で不規則に5裂する。果実は倒卵形で熟すると3裂し,赤褐色の種子を出す。種子中にデンプンがあり,水にさらしてあくを除けば食用となる。古くから救荒食とされた。栃木県の県木となっている。有名なパリのマロニエ A. hippocastanumは同属の近縁種で地中海地方の原産,花が淡紅色のものが多く,セイヨウトチノキともウマグリともいわれる。ウマグリは英名の horse chestnutの直訳である。

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