ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トマス・ベケット」の意味・わかりやすい解説
トマス・ベケット
Thomas Becket
[没]1170.12.29. カンタベリー
イギリスの宗教家,聖人。Thomas À Becket,Thomas Of Londonとも呼ばれる。ロンドン,フランスのパリで学び,カンタベリー大司教シオボールドの寵を受けた。1154年カンタベリー助祭長となり,翌 1155年ヘンリー2世の国璽尚書に任じられた。王とともに戦い,奢侈を好み,王の信頼を一身に受け,1162年教会を完全に支配しようとした王によってカンタベリー大司教に任命された。そこで厳格な生活に一転,国璽尚書も辞し,罪を犯した聖職者の裁判権をめぐって王と対立した。1164年フランスに亡命,教皇アレクサンデル3世に引退を申し入れたが許されず,1170年フランス王ルイ7世の仲介によって民衆の歓呼のなかに帰国したが,同年末 4人の貴族によってカンタベリー大聖堂で殺害された。ただちに全ヨーロッパにトマス崇敬が広まり,1173年列聖(祝日 12月29日),1174年王はその墓前に贖罪した。画像では書物,剣,シュロの枝,模型聖堂などを持つ司教として表される。トマス・S.エリオット,ジャン・アヌイがその生涯を劇化している。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報