トヤマサウリプス(読み)とやまさうりぷす

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

トヤマサウリプス
とやまさうりぷす
[学]Toyamasauripus masuiae

日本産の恐竜足跡化石で、最初に新属新種として記載命名され、命名規約上も有効と考えられている種類。属名のトヤマサウリプスToyamasauripusは富山県産の恐竜の足跡であることを示し、種名のマスイアエmasuiaeはこの研究のきっかけをつくることに貢献した葉室麻吹(はむろますい)(後述の葉室俊和(としかず)夫人)に敬意を表明したものである。白亜紀後期の手取(てとり)層群中に発見された。命名者は東京学芸大学教授の松川正樹(まさき)(1950― )、富山県古生物研究会の葉室俊和ほか(1997)。
 1994年(平成6)の春、富山県大山町(現富山市)の大清水(おおしみず)で、植物化石が多量に含まれる大露頭(地層や岩石が土壌や植生に覆われることなく直接露出している所)が富山県古生物研究会メンバーにより発見された。同時に足跡のくぼみらしいものも多数みられたが、翌95年の夏に、この大露頭の上部層が崩壊し新しく露出した地層面上に大小の起伏が存在することを葉室俊和が発見した。
 トヤマサウリプスの特徴は、足跡の長さが5~9センチメートル、3本の指が左右対称で、真ん中の指の付け根が内側に向いているほか、内側の指の下のかかとにへこみがあり、明確な爪痕(つめあと)や肉趾(にくし)の跡は認められない。小形獣脚類の足跡と比較すると共通点が多いが、コエルロサウルス類の場合は足跡の両側の指の開く角度が45~50度で、ストライドの長さ(右足から右足または左足から左足の歩み)と足跡の長さの比が7分の1~8分の1であるのに対し、トヤマサウリプスでは、それぞれ90度、5.5分の1~6.1分の1と異なる。また、オルニトミムスOrnithomimusの足跡の場合では、内側の指と真ん中の指が離れている点で異なる。
 小形鳥脚(ちょうきゃく)類ヒプシロフォドンHypsilophodonの足跡の場合には、トヤマサウリプスの内側の指の下のかかとにへこみがある特徴以外は共通的である。鳥類の足跡はトヤマサウリプスと比べると、指がより細長く、かかとが小さく、大きさが3~4センチメートルと小さく、左右非対称で両側の指の開く角度が大きく、足跡の産出密度が高い。結局、トヤマサウリプスは鳥ではなく、小形の二本肢(あし)の恐竜であるとされた。ちなみに足跡標本の長さ・幅・両側の指の開く角度を測定し、それぞれの大きさの頻度分布や長さと幅の比の頻度分布を描くと、平均値を含む区間を最頻値とする一山型となった。発見された33頭の足跡は一定地域内に生息する一種の個体群であったらしい。[小畠郁生]
『松川正樹著『恐竜ハイウェー 足跡が明かす謎の生態』(PHP新書) ▽M. Matsukawa, T. Hamuro, T. Mizukami, S. Fujii First trackway evidence of gregarious dinosaurs from the Lower Cretaceous Tetori Group of eastern Toyama prefecture, central Japan(“Cretaceous Research 18” pp. 603~619, 1997)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉プラスの解説

トヤマサウリプス

富山県上新川郡大山町(現・富山市)で白亜紀後期の地層から発見された足跡化石の古生物の名。学名「トヤマサウリプス・マスイアエ」。群れで暮らす小型恐竜とみられている。1997年命名。

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