彫刻作品(人体)で,頭部や腕,脚などを欠いたもの,また意図的に軀幹部のみを制作したもの。ギリシア語のテュルソスthyrsosに由来するイタリア語。ルネサンス期に多く発掘された古典古代の彫刻の多くは残欠作品であり,トルソであったが,それらは《ベルベデーレのトルソ》(バチカン美術館)の例が示すようにミケランジェロたちを刺激した。しかし,古代人はもちろん彫刻をあくまで完成された作品のみで評価したし,また,ルネサンス期の芸術家たちも,トルソを範として,いわば彫刻のスケッチというべきトルソのボツェットbozzetto(荒彫り習作)を制作したものの,それらを完成した芸術とはみなしていない。しかし少なくともマニエリスム以降,建築の浮彫装飾などにトルソのモティーフがあらわれ,また絵画作品のなかでトルソは彫刻の寓意として描かれる。19世紀に,こうしたトルソ・ボツェット的なものに独自の自律的な形態を見いだしたのがロダンであり,そのモニュメンタルな作品が彼の《歩く人》である。ロダンのこの試みの背後には,〈完全,完成〉に関する古典的な美学に対する〈未完成の美学〉というロマン主義的な観念の出現と,他方ではフォルムの自律性についての近代的造形の思想があったと考えられる。以降,マイヨール,ブールデル,デスピオら多くの彫刻家たちが,この自律的な,したがって〈完成された〉フォルムとしてのトルソ・モティーフを追究した。
執筆者:中山 公男
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彫刻用語で胴部像のこと。木の切り株の意から転じて人体の胴、美術上は胴体部分のみの彫像をいう。ときに、四肢の一部を残したものもある。新古典主義時代に古代ギリシア・ローマ彫刻の模刻が盛んで、欠けた発掘品に倣って習作がなされていた。近代になってロダン以後、その量塊(マッス)のもつ造形性が認識され、独立した作品として制作されるようになった。彫刻が、具象物から離れていく一過程と考えられよう。
[三田村畯右]
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…賽(さい)を振る筒も胴で,賭博(とばく)の親を〈胴元〉または〈胴親〉という。彫刻でいうトルソは胴とほぼ同義であるが,この語はバッコス(ディオニュソス)の信者たちが用いた杖(つえ)を表すギリシア語テュルソスthyrsosに由来する。剣道で切りこむ〈胴〉は胸郭下部から骨盤の上までの腹部で,上下に〈一の胴〉〈二の胴〉と分けられる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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