トルースタイト(読み)とるーすたいと(その他表記)troostite

デジタル大辞泉 「トルースタイト」の意味・読み・例文・類語

トルースタイト(troostite)

鋼の焼き入れで生じる、微細な炭化鉄と鉄の結晶とが重なりあった二相組織。焼き入れが不十分であったり、焼き戻したりしたときにできる。高級刃物に利用

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精選版 日本国語大辞典 「トルースタイト」の意味・読み・例文・類語

トルースタイト

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] troostite 米国の冶金学者 Troost の名から ) 鋼の焼入れ組織の一つフェライトセメンタイトが微細な粒に分散した相で、焼入れの不十分なときや焼き戻し鋼にみられる。高級刃物に利用される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トルースタイト」の意味・わかりやすい解説

トルースタイト
とるーすたいと
troostite

フランスの化学者トルーストを記念する顕微鏡組織の名称であり、厚さ0.01マイクロメートル程度の微細な炭化鉄Fe3Cと鉄の結晶とが重なり合った二相組織であることが電子顕微鏡により確認されている。この組織は、鋼を高温に加熱してオーステナイト組織としたものを急冷(焼入れ)して、硬質のマルテンサイト組織にしようとする際に、ときとして発生するもので、冷却が不十分な場合に鋼中の炭素原子が炭化鉄を形成してしまうために生成する。通常、オーステナイトの結晶粒境界に沿っていぼ状に成長するので、結節状トルースタイトとよばれる。均一なマルテンサイト組織にしようという焼入れ本来の目的に反するので、結節状トルースタイトの発生を防止することが必要であり、その対策として、冷却速度を速くするか、または、ニッケルクロムなどを鋼に添加して、炭化鉄の生成を抑制する方法がとられている。

[西沢泰二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トルースタイト」の意味・わかりやすい解説

トルースタイト
troostite

パーライトソルバイトと同じ炭素鋼のフェライトとセメンタイトの混合組織である。非常に微細で,組織中のセメンタイトフェライトは1万倍以上の電子顕微鏡レプリカ法でようやく識別できる。 A1 点 (→鉄鋼の変態 ) 以下での冷却速度が焼入れ (マルテンサイト化) よりわずか小さいときに現れる組織であるが,マルテンサイトの焼戻しによっても現れ,焼戻し鋼の重要な組織の一つ。硬くて靭性のあるよい機械的性質をもつ。名称は 19世紀末の金属学者 L. T.トルーストにちなむ。

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