翻訳|tracery
ロマネスク,とくにゴシック建築において窓の上部やばら窓にとりつけた,装飾的に発達した仕切りの骨組み。狭間飾(はざまかざり)ともいう。一般に石製だが,木製,金属製のものもあり,この骨組みと骨組み,骨組みと窓枠との間には,ステンド・グラスをはめる。12世紀までは薄い板石をくり抜いたプレート・トレーサリーplate traceryを用いたが,イタリアではこれに棒状の骨組みを加えた,ばら窓を造った。しかし,棒状の石材だけで造った,複雑な模様の本格的なトレーサリーであるバー・トレーサリーbar traceryを最初に用いたのはフランスのランス大聖堂で,これがその後の発展の起点となった。このトレーサリーはイギリスで直ちに採用されていちじるしく発達し,フランスをはじめヨーロッパ諸国に逆に大きな影響を与えた。中世末期にはトレーサリーは窓だけではなく,壁やボールトの表面などの装飾にも用いられた。
執筆者:飯田 喜四郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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