トロコフォラ

デジタル大辞泉 「トロコフォラ」の意味・読み・例文・類語

トロコフォラ(trochophora)

軟体動物環形動物幼生の一型。孵化ふか後に生じ、浮遊性。体は球状で、一定位置を環状に取り巻く繊毛帯がある。貝類ではベリジャー期、ゴカイ類ではロベーン期を経て成体となる。担輪子幼生。トロコフォア。

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精選版 日本国語大辞典 「トロコフォラ」の意味・読み・例文・類語

トロコフォラ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] trochophora ) 環形動物・軟体動物などの海産種にみられる、原腸期に続く浮游性の幼生。担輪子

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百科事典マイペディア 「トロコフォラ」の意味・わかりやすい解説

トロコフォラ

担輪子とも。軟体動物と環形動物の嚢胚期に続く幼生名。形は卵形数列の繊毛環があり,これを動かして水中を泳ぐ。ゴカイなどでは成長するにつれて後方環節がつくられ底生生活に入るが,軟体動物ではさらにベリジャー幼生に変態する。
→関連項目曲形動物軟体動物ミュラー幼生幼生ワムシ

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改訂新版 世界大百科事典 「トロコフォラ」の意味・わかりやすい解説

トロコフォラ
trochophora larva

担輪子ともいう。軟体動物(貝類)と環形動物(ゴカイ類など)の海産種に見られる幼生の一時期の名称。形は卵形またはこま形で,数本の繊毛環があり,これで回転しながら泳ぐ。腹側の中央に口が,後端に肛門がある。軟体動物では背側から貝殻を分泌し頭の両側に泳ぐ翼を生じて,ベリジャー幼生veliger larva(被面子)に進み,その後変態して底生生活に入る。環形動物では肛門近くから環節を生じて細長くなって底生生活に入る。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トロコフォラ」の意味・わかりやすい解説

トロコフォラ
trochophora

軟体動物 (頭足類を除く) や環形動物の発生上の一段階で,担輪子 (幼生) ,トロコフォアともいう。水中を回転しながら浮遊する。体は卵形,鈴形,こま (独楽) 形などで,上端に長い繊毛束が,中央に繊毛列が輪状に1列から数列,下端に短い繊毛束がそれぞれある。口は中央の繊毛列の下にあり,肛門は後端にある。移動は繊毛を動かすことによってなされる。発生がさらに進むと,軟体動物ではベリジャーとなり,環形動物では肛門を取巻く部分から体が後方に伸びて環節を生じロヴェーン幼生になる。軟体動物と環形動物はともにこのトロコフォラ期を経るため,成体の形は著しく異なるが,類縁の近い動物とされている。

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世界大百科事典(旧版)内のトロコフォラの言及

【コケムシ(苔虫)】より

… 雌雄同体で卵から孵化(ふか)する有性生殖と出芽によって増える無性生殖とを行う。大部分は体内で受精し,そこで発生が進んで孵化し,トロコフォラ幼生や三角形の2枚の殻をもったキフォナウテス幼生となり,プランクトン生活をする。トロコフォラ幼生は数時間,キフォナウテス幼生は十数日~1ヵ月後に他物に着生し,変態して石灰化し,のち出芽によってどんどん新しい個虫を増やして群体を大きくしていく。…

【多毛類】より

…環形動物門の1綱で,環形動物中,もっとも種類が多い。いわゆるゴカイ(イラスト),エラコイワムシなどの仲間である。ほとんどが海産で,ごく少数のものが淡水にもすんでいる。潮間帯から約1万mの深海底まで分布し,砂れきや泥中で自由生活するもの,自身で管をつくってその中にすむもの,または一生の間浮遊生活するものなど多様な生態をもっている。現在,世界で約8000種,日本では60科,850種以上がすんでいる。 体は一般に細長くて多くの体節からなっており,各体節ごとに内部もしきられている。…

【軟体動物】より

… 一般に卵はらせん分割をし,内外両胚葉に加えて,特殊な外胚葉性の細胞が陥入して中胚葉が形成される。そしてさらに発生がすすむとトロコフォラ幼生trochophoraになる。この点では環形動物門にもっとも近縁であり,扁形動物門にも類縁がある。…

【ホシムシ(星虫)】より

…雌雄異体で,卵と精子は体外に放出されて受精する。卵割は環形動物の場合とよく似ており,トロコフォラ幼生になって遊泳後,変態して水底に沈む。 ホシムシ類は発生の特徴から環形動物の多毛類やユムシ類と近縁であるといえるが,ホシムシ類には体節制がなく,特有な触手器官があり,肛門が体前方に開いており,また血管系がないことなどが,大きな特徴になっている。…

【幼生】より

…(2)原輪子幼生protrochula 原体腔類として分類される扁形動物(ミュラー幼生,ゲッテ幼生)およびひも形動物(ピリディウム幼生)にみられるもので,原体腔(胞胚腔から発展した腔所)内に内胚葉性の盲管と小さな神経節を一つそなえた簡単な構造をもち,体表に繊毛をはやして遊泳する(図2)。(3)担輪子幼生(トロコフォラtrochophora) 真体腔類,端細胞幹(裂体腔動物)に属する軟体動物および環形動物を中心とする幼生で,消化管は口と肛門で外に開き,原体腔内には浸透圧の調節と老廃物の排出を行う原腎管をそなえ,体表の四つの繊毛管によって遊泳する。神経節は簡単なものでは頭部に一つあるのみであるが,最もよく発達した軟体動物では,頭部,側部,足,体壁,内臓,口の六つをそなえたものがある。…

【幼生器官】より

…昆虫の成虫原基は,幼生の体内では表皮と細い管でつながれて未分化のままとどまるが,蛹化(ようか)脱皮を促すホルモンであるエクジソンの刺激に応じて急激な発達をみせて翻転し,幼虫の体表の諸器官と置きかわる。 幼生器官の中で系統的に最も意義深いのは軟体動物,環形動物など真体腔類・端細胞幹に属する動物群のつくるトロコフォラ幼生のそれである。この幼生の体制は原体腔を特徴とするものであり,これを系統的にみれば,より原始的な線形動物や扁形動物の体制に相当するということができる。…

※「トロコフォラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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